あの頃のように笑いあえたら
「あ、うるちゃ〜ん! 先休憩入って」

「あ、はーい」

今日は撮影が立て込んでいるからか、大森さんもバタバタしている。

ーートントン

ママが作ってくれたお弁当を持って、控え室へ入ると、そこには一足先に源がいた。

「あ、今から?」

お弁当の一口目を頬張りながらチラリと私を見る。

「うん」

ドキドキがバレないように、源の向かいに腰掛ける。

「旨そうだな、弁当」

「うん、ママの手作り」

「ふーん……自分で作れよ」

お腹が空いていたのか、食べるスピードは落とさずに話す。

「もっとゆっくり食べなよ」

時間はたっぷりあるし、弁当は逃げないよ。

「……母さんみたいだ」

そう言いながら見上げた顔は、少し微笑んでいるように見えた。

「なにそれ」

ふふ、なんか可愛いな。

母さん……本当にそう呼べる人は、源にはいない。

そう思うと、胸がギュッとなった。
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