あの頃のように笑いあえたら
源は少しずつ、その閉ざしていた心を開き始めている。

……きっと私も。

相変わらず言葉数は少ないが、以前よりは気持ちが読み取れる。

確かなことは分からないけれど、源もきっと私と同じように、自分で作ってしまった分厚い壁を壊したいんだろう。

同じ境遇だから分かるのか、やっぱり私が源に特別な感情を抱いているからなのか……。

座ると猫背になる癖、綺麗な箸の持ち方、食べるスピードが早い。

些細なことでも、源を知りたい。

やっぱり、これが恋……?

「なあ、リレーの時どんな応援してくれるんだ?」

いつの間にやら食べ終えていた源が、ふいに私を見つめるから、ドキっとした。

「それは内緒です」

「……だよな」

少し低い柔らかい声が部屋と私の心に響く。

なんで、こんなに惹かれるんだろう。

私の心の中で、源の存在がどんどん大きくなっていく。
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