あの頃のように笑いあえたら
華やかな『うる』から地味で平凡な『いとな』へ。

儀式が済むと、気分も変わる。

モデル仲間はそんな私を、芸能人が一般人に気づかれないように変身していると思っているのかもしれない。

気づかれたくないのは本当だが、私の変身は『うる』の方だ。

ほんのひと時、私が輝いて見えているであろう、変身の時間。

本当の私は、控え目な15歳。
普通の女の子だ。

それが嫌なワケではない。
ずっと変身しているのはしんどいし。

ママは、メリハリがあっていいんじゃない?なんて言うけど。

仕事モードになるのは確かだけど、時々、こうした儀式に何の意味があるのか分からなくなる。

本当の私は『いとな』だと分かっているのに……。

本当は、どっちの私も『いとな』なんだ。

「さ、帰ろう」

仕事場で買い取った、今流行りらしいバッグを持ち、帰路に着く。
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