あの頃のように笑いあえたら
ーージャキ ジャキ

小気味好いハサミの音が、頭の中に響く

もちろん、迷いはあった。

もしかしたら、私が『うる』だと気づく人がいるかもしれない。そうしたらみんなはどんな反応をするだろう。

人から注目されるのが苦手な私には、なかなか勇気がいることだった。

でも、大丈夫。源が私に勇気をくれたんだ。

「さ、できたわよ」

おっちゃんがハサミを置く音がした。

メガネをかけて鏡を見ると、そこにいたのは紛れもない『わたし』だった。

メガネをかけた『うる』でもなく。

前髪パッツンの『いとな』でもない。

「あら〜?いい!似合ってるよ、いとちゃん」

「うん、ありがとう」

前髪のある私を初めて見たおっちゃんには新鮮だったのだろう、店に飾りたいから写真を撮らせてくれと言われて、断るのに苦労した。
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