あの頃のように笑いあえたら
撮影も無事終わり、焦る気持ちを押さえながら駅へ向かう。

私が帰る時には、もう源の姿はなかったから待たせてしまっているのは分かっていた。

私はきっと、源に素直に全てを話すだろう。

そしてきっと、彼は全てを受け止めてくれる。

分かっているけど、少し不安だ。

だって彼にとって私は、ただの友達なのに……。

彼の優しさに、私は甘えてしまっていいのだろうか。

駅前に着くと花壇に座り、長い足を組んでいる源がすぐに目に入る。

黙って座っているだけでも分かる、その柔らかな雰囲気に目を奪われる。

駆け寄ると、私に気づいて顔を上げる源。

2人で待ち合わせなんて初めてのことだった。

ーーまるでデートみたい。

そう思ったら、心臓がバクハツしそうだった。

源は、軽い気持ちで私を誘ったのかもしれない。

単なる暇つぶし、とか。

でも、私にとっては……。
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