アリストの3姉妹
『こうしていても、民衆の声が胸に届いてきますね』と、アンジェ。
『ええ、お姉さま。憎しみの声を上げる民衆は、きっと未来が恐ろしくて不安なのね。彼らは悪くは無いわ』と、イリス。
『信じてくださる民衆の為にも、必ずアヴィエータの娘を助け出して無事に国へ帰りたいわ』と、ウェンディ。
『そうね・・・』3人は硬く手を握り見つめあった。

3人は、自分たちを暗い地の底から掘り起こし、この世に甦らせてくれた国王に心からの忠誠を近い、そして、生まれた母国であり国王の愛する母国の民を、ただただ愛していた。

去年なくなってしまった皇太后に助けられながら、まだ小さく幼かった国王と共に国のために尽くしてきた18年間の中ではぐくんで来た愛は、簡単に揺るぐような不確かなものではなく、目を閉じると浮かんでくるのは、生き生きと働く労働者たちの美しい汗とか、みんな一緒に広場で娯楽魔法を見て楽しんでくれたひと時の笑顔とか、洗濯女たちが笑って挨拶してくれる声とか・・・子供たちの空に響く笑いとか。

その中で自分たちが当たり前のように存在していられればそれで良かった。

『必ず、帰ろうね』
『当たり前よ。故郷なんだから』
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