アリストの3姉妹

『アヴィス!』
アンジェが、ふと言い放った。
一瞬のひらめきだった。

魔女にとってのひらめきは何かを意味するもの。
それゆえ、ひらめきは何時も以上に大切に扱う。

『私たちの偉大なる母アリストと、この姫君の実の母アビエータの名を合わせ、アヴィス。と名づけとうございます。』
『アヴィス。可愛らしい名前だ。これで私も安心して天の国に旅立ってゆける。いや、近国の沢山の兵士を殺戮してきた。行くのは地獄か・・・』
『いいえ、王様。行かれるのは天国でございます。国の事を思い、自ら命を捨て、1000年もの間、物心の付かない姫君を胸に抱きつづけてきた愛情深き王さまが、地獄に落ちるなどあるはずがございません』

『狂おしいほどに私達に嫉妬と憎しみの念を送り続けた黒魔女の娘。かわいそうに。淋しかったのね。ただ、純粋に孤独からの開放と幸せを望んでいただけ。醜い心なんかではあるはずがない』

赤ん坊は、握った両手を胸に合わせるようにした形で表情は静かに笑っていた。

『わかっているわ。良かったねぇ。本体のあなたは、まだ物心付かぬ赤ん坊のままで』
『きっと幸せにしてみせる』

その時、三人には、何か使命のようなものが与えられた。

ザムザは、三人の方を見て頷いた。『頼んだぞ』というような信頼の意が込められたような視線だった。
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