VS IV Omnibus1 撃墜女王


「変人変人変人」

 背後から、三度早口でまくしたてられて、彼は笑った。

 そんなことを言いながらも、彼女はついてきている。

 飲み直そうと誘ったら、少し考えた後に「いいぜ」と答えたのだ。

 多分。

 言葉通り、彼が変人であるから、ついてくる気になったのだろう。

 常識人の中では、彼女はとても窮屈そうだったから。

「名前!」

 先を歩く彼に、すぱっと一言飛んでくる。

「ん?」

 振り返ると。

「あんたの名前は?」

 名無しのままでは、落ち着かないのか。

 どうでもいいのに。

 彼は笑った。

「ケイでいいよ」

 略称で答える。

 名前なんて、いろいろ邪魔なことが多い。

「女みてぇだな」

 素直すぎる感想に、笑ってしまう。

「そういえば、女王の名前も、オレは知らないな」

 すると。

 彼女は、また目をむいた。

 そうだろう。

 この宙母では、彼女は有名人なのだから、今更誰かに名前を聞かれるなんて、思ってもみなかったに違いない。

「あ…あー…あー」

 言いづらそうに、彼女が言葉をつかえさせる。

「…ジョウ」

 何度も何度もうなって、ようやく最後に出てきた言葉。

 なるほど。

 言いたくないわけだ。

「いま…男みたいだって思っただろ」

 即座に、ぎろっと睨まれる。

「めっそうもない」

 そう否定したのに。

 パンチがとんできた。
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