VS IV Omnibus1 撃墜女王


「あんた、ここに何しに来たんだ?」

 二軒目のバーのカウンターで、ジョウは聞いてくる。

 ジョウ=ヒロイ。

 通りすがりの上官らしき人間に、ヒロイ少尉と呼びかけられたのだ。

「ヤボ用だよ…大したことじゃない」

 ごまかすワケでも何でもない。

 本当に、言葉通りだ。

「あんたも軍人だろ? 一般人が、ヤボ用で来られるところじゃないぞ」

 ツッコミは、正確だった。

 ここは、半要塞化した宙母。

 軍事、居住のスペース以外に、歓楽街まである。

 宙母自身は、通常移動力が最低で、頑丈さをウリにしている。

 主にワープによる、艦隊の移送と拠点が中心だ。

 だが、ぶっちゃけ立派な軍事船なわけで、ジョウの言うとおり、許可のない一般人は入ることは不可能。

「詮索好きだなあ、女王は…」

 うーんと唸ると、ジョウの方が戸惑った顔をした。

 ケイの言葉が、ショックだったようだ。

 ん?

 そんなにひどい言葉は言ってないよなと、彼は首を傾げた。

「せ…詮索なんかする気はねぇよ…ちょっと気になっただけだ」

 ふいっと、向こうを向いてしまう。

 なるほど。

 なんとなく、分かった気がする。

 詮索、という言葉がいやだったのか。

 あまり、人に関わらないようにしてきたのだろう。

 関わるには、戦時という環境は辛すぎるから。

 知ったって、明日死ぬかもしれない。

 その感情に、ケイは見覚えがあった。

「墓参りだよ…ちょうど、近くにこいつが来てるって聞いてな」

 宙母には――墓地もあるのだ。
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