VS IV Omnibus1 撃墜女王


 ここを母船として死んだ軍人は、情報チップとして墓地に弔われるのだ。

 遺族に一つ、宙母に一つ。

 ケイにとっては友人なので、墓参りをするには、どちらかを訪ねなければならないのだ。

「あー…むかつく墓だけど、墓参りって気持ちは分かるよ」

 正直な唇。

 情報チップの墓では、望めば死人と話が出来る。

 追加書き込みはされないので、呼び出す度に向こうにとっては初めての墓参りになるが。

 あくまでも、生前の彼の人格のコピーに過ぎないが。

 だが、ケイは友人を呼び出さなかった。

 ただ、金属の小さなチップを眺めて、こっそり持ち込んだ酒を飲んだだけ。

「死とは死であるべきだ…か」

 チップの、開発者の言葉だ。

 何代にも渡って開発したにも関わらず、この技術が死の概念を覆すことに使われるのを望まなかった、まさに変人だ。

「痛い死こそ…本物だろ? あたしは、チップなんかでごまかされたくねぇ」

 何かを思い出したように、ジョウはグラスを持つ指を震わせる。

 ぽんと、その背中を叩いた。

 ごまかさない女だ。

 まっすぐさは、美徳だが――それは平時の話。

 だから、自分が折れてしまわないように、敵を落とし、人を遠ざける。

 敵を落とせば、味方の犠牲が減る。

 減れば、周囲の人の死が、彼女を痛め付けない。

 なるべくして。

 彼女は、なるべくして――撃墜女王になったのだ。

「お前さん…いい女だな」

 だから、ケイは素直に評価した。

 瞬間。

 警戒の目を向けられる。

「な…何が目的だ?」

 その目と言葉の、余りの歪みっぷりに。

「ぶっははははは!」

 思い切り、笑い伏してしまった。
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