VS IV Omnibus1 撃墜女王
☆
制服組の女だった。
軍服の違う、後衛職の軍人のことだ。
「中佐、いきなり消えられては困ります!」
女は、ケイに向かって火を吹いた。
中佐、ねぇ。
自分より、えらく上の階級に、ジョウは顔を歪めながら拳を解いた。
上官だから、殴るのをやめたわけではない。
空気を察したからだ。
どうやら、お開きだと。
どんなにムカつく男でも、この船の人間でないなら、すぐにいなくなるのだ。
そしてもう、会うことはない。
「よく、ここが分かったな」
「撃墜王の話を聞いていなくなれば、誰でも分かります」
ため息をつきながら、彼女はジョウを見た。
「すみません、お騒がせして…少尉、撃墜王おめでとうございます」
白くきれいな手を、差し出される。
ペン以外、握ったことはないんじゃないかと思える細さだ。
柔らかい応対に、ジョウは戸惑った。
握り返す気には、なれそうにない。
「めでたくは…ねぇよ」
その手から、目をそらす。
「そんなことありませんよ…あなたはこの船の英雄です」
にっこりと言われた言葉に――絶句する。
英雄?
ただ、死ななかっただけだ。
いや。
死に損なっただけなのに。
「本当の英雄は…」
ジョウは、立ち上がった。
ここにいると、彼女を殴ってしまいそうだ。
悪気がないと分かっていても。
「本当の英雄は…死んだ奴だけだ」
ああ。
胸クソ悪ぃ。
制服組の女だった。
軍服の違う、後衛職の軍人のことだ。
「中佐、いきなり消えられては困ります!」
女は、ケイに向かって火を吹いた。
中佐、ねぇ。
自分より、えらく上の階級に、ジョウは顔を歪めながら拳を解いた。
上官だから、殴るのをやめたわけではない。
空気を察したからだ。
どうやら、お開きだと。
どんなにムカつく男でも、この船の人間でないなら、すぐにいなくなるのだ。
そしてもう、会うことはない。
「よく、ここが分かったな」
「撃墜王の話を聞いていなくなれば、誰でも分かります」
ため息をつきながら、彼女はジョウを見た。
「すみません、お騒がせして…少尉、撃墜王おめでとうございます」
白くきれいな手を、差し出される。
ペン以外、握ったことはないんじゃないかと思える細さだ。
柔らかい応対に、ジョウは戸惑った。
握り返す気には、なれそうにない。
「めでたくは…ねぇよ」
その手から、目をそらす。
「そんなことありませんよ…あなたはこの船の英雄です」
にっこりと言われた言葉に――絶句する。
英雄?
ただ、死ななかっただけだ。
いや。
死に損なっただけなのに。
「本当の英雄は…」
ジョウは、立ち上がった。
ここにいると、彼女を殴ってしまいそうだ。
悪気がないと分かっていても。
「本当の英雄は…死んだ奴だけだ」
ああ。
胸クソ悪ぃ。