きみと恋の話をしよう
その時、私は気付いた。
佐橋先輩のバッグの口が開いているのだ。

バッグ自体も傾き、中身がこぼれそう。
大丈夫かな、落とさないように膝の上に戻してあげようかな。

って、余計なお世話だよねぇ。
万が一、『寝ているところを変な女に触られた!』とか勘違いされたら困るし。

起きないかな、佐橋先輩。

中身落ちちゃうよ。いいんですかい?

覗いちゃいけないと思いつつ、心配でチラ見しちゃう。
バッグの中身は参考書とクリアファイルに入った書類など。

ん?文庫本だ。

そのカバーに見覚えがありすぎて、私は驚いた。

KIOIYAのロゴが入ったライトブルーのペーパーカバーは、紀尾井屋書店、私のバイト先のものだ。

間違いない。
デザインは桃子ちゃんが作ったものだし、私もいつも触ってるもん。

そうか、佐橋先輩はうちで本を買ってるんだ。
なんだか、嬉しい。
私は会ったことないけれど、ありがたいなぁ。
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