きみと恋の話をしよう
すると、がたんとバスが揺れた。
バッグの中の文庫本がするりとスライドする。

カバー付きの表紙はバッグのファスナーに引っかかってめくれ、中表紙が見える形で文庫本が座席にずり落ちる。

そのタイトルを目にし、私は目を疑った。



『俺様紳士の甘すぎる罠』



俺様紳士とな!?


なんかちょっと前にも見たけれど、あれって恋愛小説の文庫だよね。

間違いなく、佐橋先輩の読んでる本だよね。
誰かの拾ったとかじゃないよね。

マジで?
マジっすか?


次の瞬間、私は電撃に撃たれたように閃いた。

あの人だ!

いつも土日にくる恋愛小説オタクさんだ!
佐橋先輩があの人に違いない!

だって、あのタイトルはこの前私がカバーをかけたものだし、恋愛小説オタクさんの背格好は佐橋先輩にドンピシャで当てはまる。
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