きみと恋の話をしよう
「……朝、走ろうかな」


「ちょっと、千花、話が繋がんないんですけど」


菜絵に突っ込まれ、自分でも話が飛んでいたなぁと思ったその時、後ろから声をかけられた。


「深山、おまえ呼ばれてるぞ」


クラスメイトの男子に言われ、振り返った先が眩しすぎて、眩暈。

教室の前方ドアに、王子様が立っていたのだ。

普段は爽やかな印象の顔をやや強張らせて、佐橋疾風先輩がそこにいた。


クラスの子や、廊下にいた子たちがみーんな佐橋先輩を見ている。
女子のきゃあきゃあと色めき立つ声。

そりゃそうだよね、一年生の階にいきなり三年生の王子様降臨だもん!


「千花っ!なにあれっ!?」


菜絵が鋭く聞いてくる。
といっても、佐橋先輩に聞こえないよう、ひそめた声だけど。


「わっ……わかんないっ」


「佐橋先輩じゃない!あんたどこで接点あったのよ!」


言えません。
それは、どうしても言えないのです。
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