きみと恋の話をしよう
佐橋先輩が手を離す。
ふわっと男性の香りがした。

イケメンは香りもイケメンだなぁと場違いなことを考えながら、彼の顔を見上げると、先ほどまでとは少し違う表情の先輩がいる。

まいったな、そう言いたげな顔。


「てっきり、……俺の弱みを握って脅してくるもんだと……思ってた。馬鹿みたいだ、俺。一昨日からスゲー悩んで……」


「あの……あれだけ変装して買いに来てたわけですから、やっぱり恥ずかしいというか、バレたくないことなんですよね」


「当たり前だろ!」


佐橋先輩が強く言って、恥じるように声を抑えた。


「男子高校生が、恋愛小説とかオフィスラブとか好きって……絶対おかしいって思われるに決まってるだろ?」


「そうですか?私は……そんな先輩にちょっと興味持ってましたよ」


「興味とか好奇心とか、バカにする前提じゃないか」


吐き捨てるように言う佐橋先輩は、どうやら、このド級の秘密がよく知らない後輩にバレたことがものすごくショックみたいだ。
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