きみと恋の話をしよう
7時50分。

10分前に着いちゃった。
まだ開いてないよね、鍵。

そろりとドアのくぼみに手をかけると、予想に反してドアは開いた。


「佐橋先輩、もういらしてたんですか?」


準備室の窓にもたれるように佐橋先輩が本を読んでいたのだ。
長い手足とキラキラ日に透ける髪。絵になりますなぁ。

さらに彼は、私の登場に顔をあげふわっと笑った。
うわ、無防備なプリンススマイルが朝日より眩しい!
笑顔すら罪だわ、この人。


「昨日、買った本を読んでた。おはよう、深山さん」


「お……おはようございます、佐橋先輩」


「はい」


佐橋先輩は横に置いてあったビニールのショッパーバッグを手に取る。
雑貨屋さんのショッパーだ。
女子が持っていても不自然じゃないタイプのね。お姉さんからもらったのかな。

中には一冊の本。
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