きみと恋の話をしよう
誰に声をかけられたか知らないけど、王子様と二人きりで生徒会準備室にいるところを目撃されるわけにはいかない。
事実が違っても、やっかみや変な噂は嫌だもん。

佐橋先輩がドアを閉めたのも、そこを気遣ってくれてのことだろう。

とはいえ、私はバッグを手に、そろそろとドアに近付いた。
誰が佐橋先輩に声をかけたのか、ちょっと興味がある。
残念ながら、擦りガラスに阻まれて人影しか見えないし、声しか聞こえない。

ドアのすぐ外、廊下で佐橋先輩とひとりの女子生徒が向き合っている。
わかるのはそのくらい。


「疾風くん、これ、読んで」


えっと、佐橋先輩、他の女子とも本の貸し借りとかしてるのかな。

いえいえ、そうじゃないよね。この雰囲気。

たぶん、絶対……恋文的なヤツですよね。


胸に何かが響いた。


ずきん。


音にするならそんな感じ。
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