きみと恋の話をしよう
「千花―、なんかすっごい考え込んでるけど大丈夫?」


「う、うん。大丈夫……かな」


菜絵が再び声をひそめる。


「でもさ、土曜日のふたり、本当に付き合いたての彼氏彼女みたいだったよ」


「ぶぇっ!何をおっしゃる」


「ホントホント。佐橋先輩、ずーっと千花のこと見てるし、千花は幸せオーラ満開って感じで笑ってるし。手ぇつながないのが不自然なくらいだったよ」


ちょっと、菜絵さん。言い過ぎです。
ひいき目で見過ぎです。

私と佐橋先輩が彼氏彼女に見えるって、そんなのどんなマジックを使ってもあり得ないって。


「本当にそんな奇跡ないから」


言ってみたものの、“奇跡”なんて言葉を使ってしまった自分に動揺する。

奇跡っていうのは望むものだもん。

私は、奇跡を望んでいる?

私は……佐橋先輩の彼女になりたい?
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