きみと恋の話をしよう
「でも、書きだしてみたら思いのほか難しくて。特にふたりの絡みというか」


「からみ?」


「その……キスシーンが……全然書けないって気づいて」


佐橋先輩が消え入りそうな声で言う。
もしかして、キスっていうのは取材的な意味合いで?

そんなことを私に頼んじゃうくらい、追い詰められてるんですか、先輩。

実は、すっごく生真面目ですよね。

すっごく真っ直ぐですよね。


でも、……そんな大事なこと、ただの後輩に頼んじゃ駄目です。

絶対に、駄目ですよ……。


「先輩、できますよ」


頭で思うことと、真逆のことを私は答えていた。

佐橋先輩がゆるゆると顔をあげる。


「え?」


「嫌じゃないです……。先輩とキスするの」


頬が熱い。
言葉にしながら、頭がくらくらした。
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