きみと恋の話をしよう
「それじゃ、私は帰ります」


私は一歩下がると、近くに置いてあったカバンをつかむ。


「深山さん、話があるんじゃ……」


「いいんです。たいしたことじゃないんで」


ニコッと笑って見せてから、背中を向けた。

ドアを開け、外に出ると足早に昇降口へ歩き出す。

相談すべきことはあった。
土曜のこと、他の生徒に見られていたとしたら、その時の言い訳だ。口裏を合わせておくべきだ。

だけど、私はそれをしなかった。

佐橋先輩とあれ以上向かい合っていられなかったから。

もっと一緒にいたい。
もっと、話をしたい。

その気持ちと同じくらいいたたまれなかった。

恥ずかしくて、切なくて、彼の顔を見ていられなかった。
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