きみと恋の話をしよう
「でも、先輩……」


「だから、決めたのは俺なんだけど」


先輩は言葉を切って私を見つめた。少し寂しげで、だけど心を決めた顔をしていた。


「小説を読むのも書くのも、一回断とうと思う」


いいんですか?

先輩はそれで耐えられるんですか?

受験に集中できるんですか?


それに……私と会う理由、もうなくなっちゃうじゃないですか。


何一つ言葉にできなかった。


だって、まさにこの瞬間、はっきりと気付いてしまったから。

自分の気持ちの正体に。

曖昧だった部分すべてに決着がついた。



『好きです、佐橋先輩』



言えない言葉だからこそ、心の中で唱える。



『好きです』



「深山さんには感謝してる」


佐橋先輩が明るく笑って見せる。
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