きみと恋の話をしよう
ぐんと踏み込み、大きく漕ぐ。
スニーカーの足先に力を入れて。

ぐん、ぐん、ぐん。

次第にスピードが乗ってくる。

スカートの裾がふわりと風に舞う。
熱気を孕んだ風が結びクセのついた髪をなぶった。

よかった。気持ちは内緒のまま終われた。

よかった。これで、佐橋先輩は受験に集中できる。

よかったんだよ、これで。だから、泣くのはよそう。

幸せな初恋の思い出だけ、胸にしまって帰ろう。

額に汗が浮かぶ。
夏はもうそこまで来ていた。



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