きみと恋の話をしよう
まわされる腕は大きくて、ぎゅっと胸に閉じ込められると心臓が止まりそう。
あの時香った佐橋先輩のいい香りがする。

私はおずおずと先輩の腰あたりに腕をまわした。

抱き合うのは初めてで、私も先輩も慣れない行動にぎくしゃくしていた。
緊張感がお互い痛いほど伝わってくる。


「佐橋先輩、すっごくぎこちないです」


「深山さんもかちんこちんですけど」


ふたりでツッコミ合って笑ってしまった。

駄目ですね、私たち。


「えっと、初恋なんです。右も左もわからないのでよろしくお願いします」


「うん、俺もそう。あんまり期待されても、恋愛小説のヒーローっぽいことはできないかも」


「俺様な壁ドンとか無理ですか」


「無理過ぎる。緊張で白目剥いてるヤツに壁ドンされたら嫌だろ?」


ドキドキ半端ないけれど、緊張感やばいけど、佐橋先輩の腕の中はあったかい。

感じたことのない喜びが全身を満たしていくのを感じた。

恋って……すごいんだ。
< 99 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop