不倫のルール
私が愛したオトコ
私が今付き合っている人には、『奥さん』も『子ども』もいる。

いわゆる『不倫』てヤツだ。

職場の上司で、二十五才の私より十二才も年上。気が付いた時には、どうしようもなく惹かれていた。

──いや、違うな……職場の飲み会の帰り、送ってもらい、その流れで肌を重ねた。

「私、この人の事が好きだったんだ……」と気付かされたのだ。

彼──黒崎(くろさき)さんなら、私の気持ちなんてお見通しだったのかもしれないが……

ありがちなシチュエーションで、流れのまま関係をもち、その“関係”は、もうすぐ四年目を迎える。

黒崎さんが私の事をどう思っているかなんて、あまり考えていない。

そもそも私達の“関係”で、相手に『想い』を求める事自体が意味がない。

私は、そう思っている。……そう思うようにしている。


──私の父は、私が三才になったばかりの頃、自動車事故で亡くなった。

寂しいけれど、私に父の記憶はほとんどない。

母と二人暮らしのアパートに、一枚だけ飾られた父の写真。

「顔を見ると思い出して、また泣いちゃうから……」

母はそう言って、残りの写真をきれいにアルバムに貼り、まとめて段ボール箱に入れ、押入れにしまった。

でも、私は知っていた。夜中、時々母が一人でアルバムを取り出し、それを眺めながら、笑ったり、泣いたりしていた事を。

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