不倫のルール
「これまでだって繭子と会うのに、無理なんかしていない。これからだってそうするから、『別れる』なんて考える必要はないよ」

……それは……私と会う事を『無理』だなんて思わない……ていう意味じゃないよね……言葉通りの、意味だよね……

「そう、なんだ……」引きつった笑みを浮かべながら、私は心の中で泣いた……

黒崎さんの言った通り、異動してからも、これまでと変わらないペースで会っている。

変わった事は……黒崎さんがうちに到着する時間が遅くなった事と、毎日顔を合わせなくなった……たぶん、それくらい。

そして、その事を寂しいとも思わない自分に、少しびっくりした──



──十一月、陽菜ちゃんへのクリスマスプレゼントの話になった。

黒崎さんから陽菜ちゃんや奥さん─菜々子(ななこ)さんの話を聞くのは複雑だ。

罪悪感に嫉妬……複雑な思いに苛まれる。

でも、黒崎さんは以前と変わらず話すのだ。

黒崎さんから家族の話を聞いても、私はなんとも思っていない……黒崎さんは、そう思っているのだろう。

イヤ……そんな事、考えた事さえないのだろう。

「二~三年前のクリスマスに、陽菜に人形をあげたんだ。お風呂に入れたり、髪をとかしたり……お世話ができる人形」

そんな風に話し始めた黒崎さん。

「ふ~ん」と感情を殺しながら、薄く笑って聞く。

< 45 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop