不倫のルール
よかった……私はそっと、息をついた。

黒崎さんにお願いした七月の金曜日─私の二十六才の誕生日。

平日だから、黒崎さんが来るのは午後八時くらい。

普段の食事が、陽菜ちゃん中心の洋食になりやすい……黒崎さんがそう言っていたから、和食を作った。

鰻の蒲焼きをのせたちらし寿司、豆腐と三つ葉のお吸い物、私特製の肉味噌がのった冷奴、南瓜の煮付け、胡瓜やパプリカの浅漬け風……

特別に凝ったお料理ではないけれど、私なりに前日の夜から準備した。

ルームウェアではない、淡い水色のワンピースを着た。

午後八時過ぎ。黒崎さんを、玄関で出迎えた。

「繭子、お誕生日、おめでとう!」

黒崎さんは、ピンクの薔薇の花束をプレゼントしてくれた。

「ありがとうございます!きれい……」

薔薇の花束はきれいだけど、私は、頭の端で考えてしまっていた。

黒崎さんからのプレゼントは、こういう花束や、人気のお店のスイーツ……

女の子の喜びそうな物を選んでくれているけど、後に残らない物ばかりだ……

私は、小さく頭を振った。今日は、そんな事は考えない!これからの時間を、楽しもう……!

「しばらくは大丈夫だって」黒崎さんがそう言ったので、そのまま空いている花瓶に花束をさして、居間に飾った。

居間のテーブルに、お料理を並べる。手を洗った黒崎さんが座った。

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