不倫のルール
おもしろい本があると、食事や他の事を忘れて、ひたすら読書に耽った。

気に入ったお菓子があると、他の物は食べず、そのお菓子ばかりを食べ続ける。

周りに何を言われようと、気にならない。イヤ、全然耳に入らない。自分でも呆れるほど。

そのくせ「ダメ!無理!」とわかると、急激に熱は冷めていく。

「切り替えが早い」なんてよく言われるが、『切り替え』が早いのではなく『諦め』が早いだけだ。

小さな時から諦めてきた。お父さんに肩車をしてもらう事、お父さんとお母さんと手を繋ぎ、グン!と引っ張り上げてもらう事……

周りの子達が、当たり前にしてもらえる事が私には無理な事で。

母に泣きながら「どうして!?」と訴えた事もある。いつも笑っている母が、悲しそうな顔をして「ごめんね」と言って抱きしめてくれた。

幼い子どもながらに思ったんだ。お父さんがいなくて、寂しいのは私だけじゃない、と……

それからは、母に負けないくらい笑うようにした。

どんなに求めても、手の届かないものもある……笑いながら、そんな事を覚えていった。


その『諦める日』は、突然やってきた。

新庄さんと付き合い始めて、半年ほどが過ぎていた。

新庄さんが、しばらくカフェに顔を出していない。もう、二週間は経った。

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