不倫のルール
二人だけで会う事だったら、それぐらい間が空いても普通だけど。

心配になってメールをしても「忙しいから」と、返ってくるだけで……

何かあったのだろうかと、モヤモヤした気持ちでいた。

ある日、アルバイト中の休憩時間が祥子(しょうこ)さんと一緒になった。

祥子さんは二十八才。ホールのチーフで、とても頼りになるすてきなお姉さんだ。

「最近、新庄さんいらっしゃいませんね……」

思わず呟いていた。

「ゲンさん?……しばらく……って言うか、もうお店の方には、顔出せないかもね」

肩を竦めながら、祥子さんが言った。

『ゲンさん』というのは、新庄さんの事だ。新庄 元(しんじょうはじめ)というのが新庄さんのフルネームで、ベテラン社員さんはみんな『ゲンさん』と呼んでいた。

「どうしてですか?」

小首を傾げて私が訊くと、祥子さんは辺りをキョロキョロッと見回した。

「秀子さんに、浮気が全部バレちゃったらしいの」

周囲には誰もいなかったけど、それでも祥子さんは、私に顔を近付け囁くような声で言った。

「ヒデコさん?……浮気……」

突然出てきた女の人の名前や『浮気』という言葉に、私は意味がわからず戸惑った。

「あれ?もしかして繭ちゃん、ゲンさんが結婚してる事とか、知らない?」

『結婚』!!??……

さらなる衝撃的な言葉に、私は首を横に振るのがやっとだった。

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