不倫のルール
「そっか……繭ちゃんは若いし、ゲンさんの好みのタイプとも違うから、誰も教えなかったんだね」

苦笑しながら、祥子さんは言った。

「実はね……」

短い休憩時間を全て使って、祥子さんから聞かされた事実は、あまりにもショックで……

ショックが強すぎて実感がわかず、逆に冷静に話が聞けてしまった。……まるで私の知らない人の話を聞いているようだった……

六年前、新庄さん……ゲンさんは、このカフェの調理担当として働き始めた。そして、一年も経たないうちにカフェのオーナーで十才年上の秀子さんと結婚した。

秀子さんの実家は、飲食店の他にホテルや不動産会社など、手広く経営している。

秀子さんのお兄さんが後継者だが、離婚して実家に戻った秀子さんは、経営者としての手腕を発揮するようになっていった。

結婚に懲りて、仕事一筋かと思われていた秀子さんだったが、ゲンさんと出会って、あっという間に再婚。結婚をしたゲンさんは、秀子さんの方の姓を名乗るようになった。“逆玉”ってヤツになるのだろうか。

二人はいつまでも仲睦まじく……といけばよかったのだが。ゲンさんは生来の女好きらしく、結婚しても変わらなかった。

秀子さんの目を盗んでは、あろうことか経営するお店の女の子達に手を出しはじめた。

結局はバレて、ゲンさんはキツ~いお叱りを受け、浮気相手の女の子達は、お店をクビになる。

それでも全然懲りないゲンさん。仕方なく、周りの社員達が女の子達に、ゲンさんの誘いに乗らないように注意をしていたそうだ。

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