オオカミくんと子ブタちゃん
*****
今日からいつもと違う道を帰るため、優衣とはすぐに別れた。
前の家は駅まで優衣と帰れたんだけど、新しい家…つまり大賀見の家は学校から徒歩圏内にあって近い。
しかも、帰り道に公園やスーパーもあって、とても住みやすいところだ。
私は夕飯の材料を買うため、スーパーに行こうと公園の前を通った。
子供たちの元気な声があちこちから聞こえてくる。
「平和だなぁ〜。」
「平和なのは、お前の頭の中だ。」
独り言に返事が返ってきたので、驚いて声がした方を見る。
公園の入口にある大きな木に、やたらとママさん達の視線を集めてる男がもたれていた。
「おせーよ、子ブタっ。」
「へ?なんでアンタがここにいるの?」
先に帰ったはずの大賀見が、なぜか私を待っていた。
「……………。今晩、食いたい物がある///」
なんか間があったような…?
ま、いっか。
「何が食べたいの?」
「…スーパーに行ってから決める。」
は?
食べたい物があるって言っておいて、食べたい物が決まってないって…どういうこと?
謎なヤツだな…。
「んじゃ、買い物に付き合って。」
「仕方ねぇから付き合ってやるよ。」
ママさん達から「行っちゃうの?」みたいな視線を背中に浴びながら、パンパンと軽く制服を叩いて木の屑を落とし、大賀見がこっちに向かって歩いてきた。
私達は2人でスーパーへ向かい買い物を始めたんだけど…
「どこに居ても視線を集める人だなぁ。」
「は?何が。」
「気付いてないの?お店の人の視線がほぼアンタに集まってるよ。」
この時間帯は、お買い物中のママさん、店員さんもバイトの入れ替わり時間で若い女性が多い。
みんな大賀見の事をうっとりとした目で見ていて、なんだか私みたいなのが隣にいて申し訳ない気持ちになる。
「大賀見って、けっこう鈍いんだね。」
「鈍いのはお前だ…バカ。」
「え?いやいや、大賀見でしょ。」
「はぁ…もう、いいよ。ってか、人の視線なんていちいち気にしてられっかよ。面倒くせぇ。」
なんで、私が溜め息をつかれなきゃいけないんだ?
「んで、なに作るんだよ。」
「大賀見が食べたい物があるって言ったんじゃん。」
ああ…と言って口元に手を当て考え出した。
さっきから、なんかヘンなんだよね?
私の事を待ってたみたいだし、食べたい物があるっていいながら何も考えてないみたいだし…。
「それじゃ…ハンバーグ。」
「え?」
「だから、ハンバーグ///」
「大賀見、ハンバーグが好きなの?」
大賀見みたいなクールな人がハンバーグって…
か、可愛い///
ギャップ萌えってヤツ?
「好きで悪いかっ。いいから作れよ///」
照れ隠しなのか私の髪をクシャクシャとする。
「ふふ…了解。ハンバーグね。」
私がレジを済ませ袋を持とうとすると、大賀見が黙ったまま横からスッと袋を取り上げた。
ーーーーーもしかして……
公園で待ってたり、食べたい物があるって言っておいて決まってなかったり、それって荷物を持つためにしてくれた事なの?
「…ありがとう。」
「…なにがだよ。」と言って、大賀見はスタスタと歩いて行ってしまう。
ふふ…
なんだか、初めの印象とだいぶ変わってきたな。
初めは、なんて傲慢で冷たい人なんだと思ったけど、本当は不器用で優しくて…可愛いところもある人なんだね。
◇◇◇◇◇◇◇
「何やってんだよアイツ。おっせぇなぁ。」
俺は茉莉花ってヤツから逃げるように教室を出て、いま帰宅経路にある公園で子ブタを待っていた。
うちの住込み家政婦として働き出した子ブタは、掃除も洗濯も完璧で料理まで美味い。
それに、風呂も安心して入れるし夜もグッスリと眠れるようになった。
なにより、俺に関心がないことが嬉しい
……はずなのに
俺以外の男、涼介に関心を持っているのがなんだか面白くない。
何故なんだ?
アイツが気になって仕方ない。
今日の昼メシの時も、涼介とアイツを見てると、なんだか胸の辺りがザワザワして落ち着かないし
教室からグランドにいる涼介の姿を、嬉しそうに眺めているアイツを見ると、イライラとする。
今だって柄にもなく、こんなところでアイツを待っている。
何をやってるんだ?俺は…
はぁ…と溜め息をつき視線を上げると、アイツの姿が目に入った。
サラサラと綺麗な長い髪を揺らしながら歩く姿に、思わず吸い込まれる。
アイツの周りだけが、なんだかキラキラとして見えた。
俺だけじゃなく、たくさんの男の視線を集めているアイツ。
全く気付いてねぇな…あれは。
今にも声をかけそうな男が、ウジャウジャといるってぇのに…危機感ゼロ。
「平和だなぁ〜。」
アイツがオレンジ色の空を見上げながら、呑気に独り言を言っている。
はぁ…マジで厄介な女。
「平和なのは、お前の頭の中だ。」
この俺が女とスーパーへ行って、荷物を持ってやる日が来るなんて想像もしてなかった…
今日からいつもと違う道を帰るため、優衣とはすぐに別れた。
前の家は駅まで優衣と帰れたんだけど、新しい家…つまり大賀見の家は学校から徒歩圏内にあって近い。
しかも、帰り道に公園やスーパーもあって、とても住みやすいところだ。
私は夕飯の材料を買うため、スーパーに行こうと公園の前を通った。
子供たちの元気な声があちこちから聞こえてくる。
「平和だなぁ〜。」
「平和なのは、お前の頭の中だ。」
独り言に返事が返ってきたので、驚いて声がした方を見る。
公園の入口にある大きな木に、やたらとママさん達の視線を集めてる男がもたれていた。
「おせーよ、子ブタっ。」
「へ?なんでアンタがここにいるの?」
先に帰ったはずの大賀見が、なぜか私を待っていた。
「……………。今晩、食いたい物がある///」
なんか間があったような…?
ま、いっか。
「何が食べたいの?」
「…スーパーに行ってから決める。」
は?
食べたい物があるって言っておいて、食べたい物が決まってないって…どういうこと?
謎なヤツだな…。
「んじゃ、買い物に付き合って。」
「仕方ねぇから付き合ってやるよ。」
ママさん達から「行っちゃうの?」みたいな視線を背中に浴びながら、パンパンと軽く制服を叩いて木の屑を落とし、大賀見がこっちに向かって歩いてきた。
私達は2人でスーパーへ向かい買い物を始めたんだけど…
「どこに居ても視線を集める人だなぁ。」
「は?何が。」
「気付いてないの?お店の人の視線がほぼアンタに集まってるよ。」
この時間帯は、お買い物中のママさん、店員さんもバイトの入れ替わり時間で若い女性が多い。
みんな大賀見の事をうっとりとした目で見ていて、なんだか私みたいなのが隣にいて申し訳ない気持ちになる。
「大賀見って、けっこう鈍いんだね。」
「鈍いのはお前だ…バカ。」
「え?いやいや、大賀見でしょ。」
「はぁ…もう、いいよ。ってか、人の視線なんていちいち気にしてられっかよ。面倒くせぇ。」
なんで、私が溜め息をつかれなきゃいけないんだ?
「んで、なに作るんだよ。」
「大賀見が食べたい物があるって言ったんじゃん。」
ああ…と言って口元に手を当て考え出した。
さっきから、なんかヘンなんだよね?
私の事を待ってたみたいだし、食べたい物があるっていいながら何も考えてないみたいだし…。
「それじゃ…ハンバーグ。」
「え?」
「だから、ハンバーグ///」
「大賀見、ハンバーグが好きなの?」
大賀見みたいなクールな人がハンバーグって…
か、可愛い///
ギャップ萌えってヤツ?
「好きで悪いかっ。いいから作れよ///」
照れ隠しなのか私の髪をクシャクシャとする。
「ふふ…了解。ハンバーグね。」
私がレジを済ませ袋を持とうとすると、大賀見が黙ったまま横からスッと袋を取り上げた。
ーーーーーもしかして……
公園で待ってたり、食べたい物があるって言っておいて決まってなかったり、それって荷物を持つためにしてくれた事なの?
「…ありがとう。」
「…なにがだよ。」と言って、大賀見はスタスタと歩いて行ってしまう。
ふふ…
なんだか、初めの印象とだいぶ変わってきたな。
初めは、なんて傲慢で冷たい人なんだと思ったけど、本当は不器用で優しくて…可愛いところもある人なんだね。
◇◇◇◇◇◇◇
「何やってんだよアイツ。おっせぇなぁ。」
俺は茉莉花ってヤツから逃げるように教室を出て、いま帰宅経路にある公園で子ブタを待っていた。
うちの住込み家政婦として働き出した子ブタは、掃除も洗濯も完璧で料理まで美味い。
それに、風呂も安心して入れるし夜もグッスリと眠れるようになった。
なにより、俺に関心がないことが嬉しい
……はずなのに
俺以外の男、涼介に関心を持っているのがなんだか面白くない。
何故なんだ?
アイツが気になって仕方ない。
今日の昼メシの時も、涼介とアイツを見てると、なんだか胸の辺りがザワザワして落ち着かないし
教室からグランドにいる涼介の姿を、嬉しそうに眺めているアイツを見ると、イライラとする。
今だって柄にもなく、こんなところでアイツを待っている。
何をやってるんだ?俺は…
はぁ…と溜め息をつき視線を上げると、アイツの姿が目に入った。
サラサラと綺麗な長い髪を揺らしながら歩く姿に、思わず吸い込まれる。
アイツの周りだけが、なんだかキラキラとして見えた。
俺だけじゃなく、たくさんの男の視線を集めているアイツ。
全く気付いてねぇな…あれは。
今にも声をかけそうな男が、ウジャウジャといるってぇのに…危機感ゼロ。
「平和だなぁ〜。」
アイツがオレンジ色の空を見上げながら、呑気に独り言を言っている。
はぁ…マジで厄介な女。
「平和なのは、お前の頭の中だ。」
この俺が女とスーパーへ行って、荷物を持ってやる日が来るなんて想像もしてなかった…