オオカミくんと子ブタちゃん
*****


「ねぇねぇ、滝沢くんとは付き合ってるの?」



同じクラスの女子2人が話しかけてきた。

優衣以外の女子と話をするのが初めてで少し緊張する。

「ないない、そんな恐れ多いよっ///」

私は顔の前で手を思いっきりブンブンと振り答えた。

「あははっ、そんな全力で否定しなくても。意外と面白い人なんだね、小辺田さんって。」

「見た目はクールビューティだけど、けっこう天然なんだよぉ、葵って。」

優衣が後ろを向いて座り直し、私の頭をポンポンとする。

「な、なに言ってんの?優衣?私がクールビューティなわけないじゃん///。」

私は必死で訂正をした。

だって、私がクールビューティだったら今までに彼氏できてるはずだもん。

クールビューティじゃない証拠に、私生まれてからずっと彼氏いませんから。

「小辺田さんは、クールビューティだよっ。私なんか憧れさえ持ってるよ///。」

「私もー。滝沢くんと並んでるの見て素敵だなぁって///。」

いやいやいや…///

滝沢くんに失礼だよ。

「私は、意外と葵って…大賀見と並ぶとしっくりくると思ってるんだよねぇ。」

今は誰もいない大賀見の席を見ながら優衣が言った。

「じょっ、冗談やめてよぉ…優衣ぃ。」

私が机に突っ伏しながら言うと

「なに言ってんだ?こっちのセリフだろ。」

大賀見がいつの間にか席に戻って来ていた。

「きゃっ、大賀見くん///。」と女子2人が顔を赤らめている。

やっぱモテるんだね、この人…。

まぁ、見た目はイケメンだけどね。

しかも、超の付くイケメン…。

「どうもスミマセンね。」

私は大賀見の方を向いて、ベーと舌を出す。

「………ガキ///。」

大賀見は、ひと言だけ言って机に突っ伏し寝始めた。

ガキって…ほんとムカつく奴だなぁ。

「なんかさぁ、大賀見くんって前より威圧感がなくなったよね?近づき安くなったというか…。」

赤くなってる2人が、大賀見の眠りを妨げないように小さな声で話す。

確かに…最近は話しやすくなったような気がするなぁ。

この前、ハンバーグを作った時も、美味しいって言ってくれたし、片付けも手伝ってくれたり…

意外といい奴なんだよね。

隣でスヤスヤと寝ている大賀見を見ていたらチャイムが鳴り、「お前ら早く席につけよー。」と言いながら小林クンが教室へ入ってきた。

小林クンは教壇に立ち、黒板に何か書き終わるとチョークを置き、私達の方を向く。

「今日はオリエンテーションの班決めをする。男女2名ずつでサッサと班を作れー。以上。」

それだけ言うと小林クンは、教壇の脇にある椅子にドカッと座り、グランドをボーと見ている。

ひょっとして面倒くさがってませんか?小林先生…?

「葵、一緒の班になろぉ。」

前の席の優衣がニコニコと笑顔で振り向き言った。

「もちろんっ。」

私は食い気味なくらいの早さで返事をする。

あとは男子2人かぁ…

ん?

周りの男子がソワソワしながら、こっちを見ている事に気付く。

そっか…みんな優衣と同じ班になりたいんだ。

優衣はその視線なんて全く無視して

「大賀見、一緒の班になろぉ。」

ビックリな発言をした。

「えっ?えっ?優衣??」

優衣が私の耳元に手を当て「だってぇ、他の男子より面倒くさくなさそうじゃん。」と小声で話す。

そりゃ、そうかも知れないけど…

チラッと大賀見の方を見てみる。

大賀見の切れ長の目と視線があった。

「別にいいけど。」

大賀見が視線を合わせたまま、怠そうに答えた。

その怠そうにしている大賀見の肩に、誰かの腕がまわる。

「はい、はい、はぁいっ。俺っちも同じ班に入るぅー。」

茶髪にピアスに指輪、くっきり二重で長い睫毛、スラッと体型。

いかにも女癖の悪そうなチャラ男が、大賀見に絡んでいる。

「馴れなれしいっ。誰だよっ。」

大賀見が超不機嫌モードで、思いっきり肩に回された腕を振り払う。

「冷たいなぁ大賀見くんはー。クラスメイトじゃん、覚えててよー。」

ニコニコ笑いながらチャラ男が大賀見の顔を覗き込んだ。

「ウザいっ‼︎」

力一杯、チャラ男の顔面を手で押しのける大賀見。

「葵ちゃーん、大賀見くんが冷たーい。」

チャラ男が今度は私の肩に腕を回して、抱きついてきた。

「ちょっと!葵から離れてよっ‼︎」

優衣がチャラ男を引き離そうとするが、力の差があり過ぎてなかなか離れない。

私もぎゅーと力を入れてチャラ男の体を押すがビクともしない。

どうしたものかと考えていたら、フッと絡まっていた腕が離れた。

「…大賀見?」

不機嫌な顔のままの大賀見が、無言でチャラ男の腕を外してくれた。

「ゴメンねー、葵ちゃん。調子に乗りすぎちゃった。
俺、白咲 翔(しろさき しょう)。ヨロシクねっ。」

ウィンクをしながらペロッと舌を出し可愛く謝った。

それを見ていた女子がキャ〜と黄色い声をあげる。

へぇ、白咲くんも人気あるんだ…?

結局、大賀見と白咲くんというイケメンに代わって、私達と同じ班になろうという男子がいなくて、この4人で決定した。

優衣も大賀見も納得がいかないみたいだったけどね…。

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