オオカミくんと子ブタちゃん
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コンコン、パカ、ジュー……

私は眠れないまま朝を迎え、大賀見…いや、オオカミの朝食とお弁当を準備している。

「はぁ….、なんであんな事したんだろ?大賀見のヤツ」

ため息を吐きながらフライパンに蓋をする。

そういえば、昨日、変な人に絡まれてから機嫌が悪かったような…

あの時に迷惑をかけてしまったから怒ってんの?

滝沢くんとご飯を食べる事になってからも機嫌が悪かったよね?

う 〜ん…

あっ、そうか!

それで憂さ晴らしに私をからかって遊んだのねっ。

………………………………。

はぁ…

ファーストキス…………だったのに

初めては好きな人とって思ってたのに…


…………………………………………。






「なに、一人で百面相してんだ?」

「う、うわぁーーっ!」

知らないうちに大賀見が真後ろに立っていて、私の肩に顎を乗せフライパンを覗き込んでいた。

「朝から、うるせぇな奴だなぁ。そんなビックリすることじゃねーだろ。」

「ビ、ビ、ビックリするわよっ///急に現れないでよねっ!」

ダ、ダメだっ!

昨日の事を思い出したら平常心ではいられないっ///

「は?…アホらし。」

「き、昨日の事だってっ、私は許してないからねっ‼︎」

「昨日のことって?」

大賀見はクルッと私を180度回転させ、両肩に腕を置き私の後頭部辺りで手を組んだ。

「なに?言ってみろよ。」

ニッコリと微笑む大賀見…

相変わらずのイケメン///

大賀見の唇に自然と視線がいってしまう私///

「キ…キ…キ…///って言うわけないでしょっ‼︎バカッ‼︎」

「プププ……お前、オモシロすぎっ。」

大賀見は「あー腹いてぇ」とお腹を押さえ、爆笑しながらキッチンを出て行った。

ま、またっ!からかわれた⁈

なんで、あんなに普通でいられるの?

大賀見にとってはどうでもいい事だったの?



プス…プス…プス…

ん?なんの音?

なんか…焦げ臭い⁇

「あーーっっ‼︎目玉焼きがーーっっ‼︎」

慌てて火を消しアタフタとしていると、リビングからは普段の大賀見からは想像出来ないほどの、大きな笑い声が聞こえてきた。

ま、またっ、笑われたーーーーっ‼︎




二人で朝食をとったあと、私はキッチンの片付けを終え、身支度を整えてから家を出る。

大賀見とは、もちろん別々に家を出る。

だって、同居の事がバレたら、学校の女子全員を敵に回すと言っても過言ではないからね。

いつものスーパーを過ぎ、公園の前を通って学校へと着いた。

今朝はドキドキしながら、そっと靴箱を開ける。

買ったばかりなんだから、もうやめて下さいよ…。

「………あった。」

私はホッと胸を撫で下ろす。

よかった…今日はちゃんとスリッパが靴箱にあった。

さすがに幼稚な茉莉花ちゃんも、同じ手は使わないか。

私は無事だった新しいスリッパに履き替えて教室に向かう。

「おっはよー、葵ちゃーん。」

急に後ろから誰かに抱きつかれ、私は咄嗟に鞄で叩いた。

「いったー。葵ちゃんヒドイよー。」

鞄が当たった脇腹を摩っているこの人は…え〜と…誰だっけ?

「あーっ、俺の名前わすれてるでしょー。白咲 翔だよぉ。」

マジ忘れてた…。

「おはよう、白咲くん。」

「翔って呼んでね。葵ちゃん。」

「え…と、呼ばない…かな?」

正直、白咲くんは軽い感じだから苦手なんだよね。

「そぉよっ!呼ばないし、葵の事も名前で呼ばないでよねっ。」

優衣が教室から出てきて、私をぎゅっと抱きしめながら言った。

「えーっ、優衣ちゃんヒドイー。俺に冷たくなーい?」

「うるせぇ…。入り口でゴチャゴチャすんな。邪魔なんだよ。」

あ、大賀見…

優衣が言ったのかと思って一瞬ビックリしちゃったよ。

「あっ、春斗くーん。おはよー。」

ピョンッとニコニコとご機嫌な様子で、大賀見の肩に手を乗せる白咲くん。

大賀見のこと…春斗くんって名前で呼ぶなんて、怖いもの知らずだなぁ。

バシッ‼︎

ほら、やっぱり大賀見に叩かれちゃったよ。

「お前、マジ、うぜぇ。」

大賀見は白咲くんを振り払ってから自分の席に座るが、その後を白咲くんが懲りずにトコトコと付いて行き、そこでまたバトルが繰り広げられる。

「あはは…白咲くんって、面白い人だったんだね。」

教室のドア付近で優衣とその光景を見て笑っていると

「二人とも楽しそうだね。」

今日もキラキラスマイルの王子様が、黄色い声と共にやって来た。

「おはよぉ、滝沢くん。」

優衣が笑顔で答えると、それを見ていた滝沢くん以外の男子がメロメロになっている。

「お、おはようっ!滝沢くんっ!」

私も挨拶をしたが、昨日キッチンであった事を思い出してしまい、思わず声が裏返った。

「おはよ、小辺田さん。」

クスクスと笑いながら挨拶をされた。

恥ずかしい…///

仕方ないよねっ。

こんな王子様の様な人に、後ろからぎゅっと抱きしめられたら、誰だっておかしくなっちゃうよねっ///

「ところで、ハルに懐いてる彼は何?」

「あぁ、あれは白咲くんっていって、今度のオリエンテーションで同じ班になったんだぁ。」

優衣が胸の前で腕を組み、白咲くんを残念そうな顔で見ながら答えた。

「へぇ…。彼、さっき小辺田さんに抱きついてなかった?」

た、滝沢くんの目が冷たく見えるのは私だけでしょうか⁇

「あれはっ、抱きつくというか…じゃれてるというか…。」

なんだろ?

白咲くんは、よく触れてくるけど…

好意を持たれてるって感覚ではないんだよね?

私を恋愛対象として見てないというか…

何かよくわからないけど、そんな感じがするんだよね。

「気安く触らないで欲しいよね…。」

「え?」

「ううん、なんでもないよ。僕もハルに挨拶して来ようかな。」

そう言って滝沢くんは、大賀見と白咲くんのバトルの場へ入っていった。

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