オオカミくんと子ブタちゃん
第3章 それぞれの想い

秘密



オリエンテーション当日の今日は、雲ひとつない快晴。

今は皆んなでバスに乗って、現地に向かっているところ。

窓から見える景色は、山の緑に川や空の青で溢れている。

本日の予定は、山登りと飯盒炊爨、夜にはキャンプファイヤーをするらしい。

このキャンプファイヤーにはジンクスがあって、告白すると成就するんだって。

そのせいか、なんだか皆んなソワソワしてる?

優衣には「滝沢王子に告白しないのぉ?」なんて聞かれたけど………………………






「やっと着いたぁ。」

優衣がバスを降りて「ん〜」と背伸びをする。

「やっぱスマホの電波ないなぁ。」

私は周りの景色を見ながら、ひとり呟く。

今日は宿舎に戻るまでは、スマホが使えなさそうだな…

パパからのLIMEもお預けかぁ。

「俺、昨日からウキウキして眠れなかったよー。」

長時間のバス移動だったのにも関わらず、白咲くんは相変わらず元気いっぱいにバスを降りてきた。

白咲くんとは対照的に、グッタリとした表情で降りてきた大賀見。

そりゃ、そうなるよね?

バスの中、ずっと隣で白咲くんがあのテンションのまま絡んできてたもんね…。

「なに?俺に見惚れてんの?」

大賀見が私の頭に手を乗せ、覗き込むように顔を近づけてきた。

「そっ、そんなワケないでしょっ!自惚れないでよねっ///」

慌てて頭にある大きな手を除けて、大賀見と距離をとる。

だって…あのキスの事を思い出しちゃうんだもん。

近くで大賀見の顔なんて見れないよ///

「あっそ。」

と、ひと言だけ言って集合場所へタラタラと歩いて行く大賀見。

あの日から大賀見はとても優しい…。

嫌がらせで水を掛けられて、びしょ濡れになって…

上級生男子に冷やかされて…

とても恥ずかしくて、どうしたらいいか分からなくて固まってた私を守ってくれた大賀見。

いつもは悪態ばかりつくのに、家に帰ってからも優しくて…

大賀見に頬を引っ張られ、痛くもないのに「痛い」と泣いた私。

ずっと泣きたいのを我慢してたこと、アイツに見透かされていた。



「俺がお前を守るから…」



そう言った大賀見の腕の中が、逞しくて暖かくて…安心できて…

ずっとこのままでいたい…なんて思ってしまったんだよね///



「どうしたの、葵?行くよぉ。」

優衣が私の背中をポンッとしてから、腕に手を絡ませ私を引っ張って行く。

「うん、行こっ。」

「あれ?葵、日焼けしたぁ?顔がちょっと赤いよ。」

「えっ⁈ウソ⁈バスで窓側だったから焼けたのかな?」

「日焼け止め塗ってないのぉ?」

「着いてからでいいかなぁと思って、まだ塗ってない。」

「甘いなぁ。早く集合場所に行って塗っちゃおう。」

「うんっ。」

私は優衣と集合場所へと向かった。





「滝沢王子に告白しないの?」




優衣に言われた事をふいに思い出す。

滝沢くんに告白……か。

なぜだか、少し違和感を感じる。



私の気持ちって……

………………今どこにあるんだろう?




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