オオカミくんと子ブタちゃん
*****
トントントン…
私は慣れた手つきで野菜を刻んでいく。
学校が終わってすぐにパパから連絡があった。
今日は珍しく早く帰って来れるらしい。
「パパの大好きなカレーライスにしよう」と私はウキウキで学校帰りに買い物をしてきて今に至る。
パパと一緒に夕飯を食べるのは何日ぶりだろう?
1カ月ぶりくらいかな?
ほぼ毎日のように残業してるもんな…。
そんな事を思いながら、私は何種類ものスパイスを混ぜ合わせていく。
キッチンに食欲をそそるいい香りが充満する。
ピポ、ピポーン…
家のチャイムが2連続で鳴った。
パパだっ!
幼い頃から1人で留守番をすることが多かったから、防犯のためにパパと2人で決めたチャイムのリズム。
ママが居なくなってから10年間、ずっと続けてきたルール。
ママは私が5歳のときに交通事故で亡くなった。
パパは男手ひとつで私を育ててくれたの。
仕事が 忙しいのに頑張って早く帰ってきてくれたり、参観日もできるだけ見に来てくれた。
ママが居なくて寂しいけど、パパが一生懸命に私に愛情を注いでくれてるから大丈夫。
友達は自分のパパを「ウザい」とか言ってるけど、私はパパが大好きなんだ。
パタパタと玄関まで走ってパパを迎えに行く。
カチャッとドアが開いてパパが顔を覗かせた。
「パパっ!お帰りなさいっ!」
私は嬉しくてパパに抱きつくと
「ただいま、葵。」
パパはとても優しい笑顔で答えてくれた。
「おっ、晩ご飯はカレーライスか?葵のカレーは美味いからなぁ、楽しみだ。」
と言って私の頭を優しく撫でてくれる。
「すぐに準備をするから、パパは手を洗ってきてね。」
私が洗面所を指差しながらパパに言うと、パパが「了解」と言って手を洗いに行く。
パパは38歳のおじさんなんだけど、 ジャ○ーズ系の顔で見た目がメチャ若い。
私とパパが2人で出かけると、よくカップルに間違えられるんだ。
イケメンだから逆ナンとかもされる事があるみたい。
「うおっ、美味そう。では、いただきます。」
手を洗って部屋着に着替えたパパが、椅子に座り手を合わせる。
パクッと、一口カレーを食べて「美味いっ。」と言ってくれる。
パパが美味しいって褒めてくれるのが嬉しくて、私は幼い頃から料理の勉強を一生懸命にしてきた。
今では得意分野であり趣味でもある。
私達は今日の入学式の事、友達が出来た事とかを話しながら楽しく夕食の時間を過ごした。
食器の片付けが終わって、パパにはコーヒー、私には紅茶を淹れてリビングに持っていく。
ソファに座っているパパに「はい」と言ってコーヒーを渡した。
「ありがとう」と笑顔で言ってくれる。
でも…
その後すぐにパパの表情が硬くなった。
コーヒーをテーブルにそっと置いてから、パパが私の方を向く。
「今日は、葵に大事な話しがあるんだ…。」
「……なに?」
私も持っていた紅茶をテーブルに置き、パパの方を見る。
「急な事で申し訳ないんだけど…。」
珍しくパパの口がとても重たい。
よほど言いにくい事なんだ…。
私はドキドキしながらパパの言葉を待った。
「…今日、辞令が出てニューヨーク支社へ転勤になった。準備が出来次第、すぐにむこうへ行かなくてはいけないんだ。」
「…………。」
予想外な重大発表すぎて、何も言葉が出てこないよ…パパ…。
「ごめんな。………あともう一つ報告があるんだ。」
今度は頭をガシガシと掻きながら、少し眉間にシワを寄せているパパ。
まだこれ以上の発表があるの⁇
私はすぅと深呼吸をして「どうぞ」とパパに合図をする。
パパもすぅと深呼吸をしてから話し出した。
「葵も知ってる、美咲さん。彼女と結婚したいんだ。できたらニューヨークへ連れて行きたいと思ってる。」
……え⁈
え??
「えーーーーっっ‼︎」
驚いて思わず大きな声が出てしまった。
パパは真っ赤な顔をして、また頭をガシガシと掻いている。
うそっ⁈
結婚っ⁈
美咲さんと付き合ってるのは知ってるけど…
まさか、結婚だなんて…。
「葵は入学したばかりだから、パパと一緒にニューヨークに行くのは嫌かな?」
ハハ…と苦笑いしながらパパが言った。
正直、頑張って入った学校だから辞めるなんて事はしたくない。
それより…
パパと美咲さんの…結婚は……………
今はまだ、考えられない。
パパには、もちろん幸せになって欲しい。
美咲さんは手に職をちゃんと持っていて自立もしていて、とても綺麗で優しくて…とても素敵な人。
私も大好きな人。
でも、パパが美咲さんと結婚したら…
私はきっと
ひとりぼっちになる。
だって、私は………………
「ごめん、結婚の話しは早過ぎたな。その話しは忘れてくれ。」
黙り込んでしまっていた私に気を遣い、パパは結婚話を取り消した。
「…ごめん、パパ。転勤の事も結婚の事も少し考えさせて。」
私はそれだけをパパに伝えて自分の部屋へ閉じこもった。
トントントン…
私は慣れた手つきで野菜を刻んでいく。
学校が終わってすぐにパパから連絡があった。
今日は珍しく早く帰って来れるらしい。
「パパの大好きなカレーライスにしよう」と私はウキウキで学校帰りに買い物をしてきて今に至る。
パパと一緒に夕飯を食べるのは何日ぶりだろう?
1カ月ぶりくらいかな?
ほぼ毎日のように残業してるもんな…。
そんな事を思いながら、私は何種類ものスパイスを混ぜ合わせていく。
キッチンに食欲をそそるいい香りが充満する。
ピポ、ピポーン…
家のチャイムが2連続で鳴った。
パパだっ!
幼い頃から1人で留守番をすることが多かったから、防犯のためにパパと2人で決めたチャイムのリズム。
ママが居なくなってから10年間、ずっと続けてきたルール。
ママは私が5歳のときに交通事故で亡くなった。
パパは男手ひとつで私を育ててくれたの。
仕事が 忙しいのに頑張って早く帰ってきてくれたり、参観日もできるだけ見に来てくれた。
ママが居なくて寂しいけど、パパが一生懸命に私に愛情を注いでくれてるから大丈夫。
友達は自分のパパを「ウザい」とか言ってるけど、私はパパが大好きなんだ。
パタパタと玄関まで走ってパパを迎えに行く。
カチャッとドアが開いてパパが顔を覗かせた。
「パパっ!お帰りなさいっ!」
私は嬉しくてパパに抱きつくと
「ただいま、葵。」
パパはとても優しい笑顔で答えてくれた。
「おっ、晩ご飯はカレーライスか?葵のカレーは美味いからなぁ、楽しみだ。」
と言って私の頭を優しく撫でてくれる。
「すぐに準備をするから、パパは手を洗ってきてね。」
私が洗面所を指差しながらパパに言うと、パパが「了解」と言って手を洗いに行く。
パパは38歳のおじさんなんだけど、 ジャ○ーズ系の顔で見た目がメチャ若い。
私とパパが2人で出かけると、よくカップルに間違えられるんだ。
イケメンだから逆ナンとかもされる事があるみたい。
「うおっ、美味そう。では、いただきます。」
手を洗って部屋着に着替えたパパが、椅子に座り手を合わせる。
パクッと、一口カレーを食べて「美味いっ。」と言ってくれる。
パパが美味しいって褒めてくれるのが嬉しくて、私は幼い頃から料理の勉強を一生懸命にしてきた。
今では得意分野であり趣味でもある。
私達は今日の入学式の事、友達が出来た事とかを話しながら楽しく夕食の時間を過ごした。
食器の片付けが終わって、パパにはコーヒー、私には紅茶を淹れてリビングに持っていく。
ソファに座っているパパに「はい」と言ってコーヒーを渡した。
「ありがとう」と笑顔で言ってくれる。
でも…
その後すぐにパパの表情が硬くなった。
コーヒーをテーブルにそっと置いてから、パパが私の方を向く。
「今日は、葵に大事な話しがあるんだ…。」
「……なに?」
私も持っていた紅茶をテーブルに置き、パパの方を見る。
「急な事で申し訳ないんだけど…。」
珍しくパパの口がとても重たい。
よほど言いにくい事なんだ…。
私はドキドキしながらパパの言葉を待った。
「…今日、辞令が出てニューヨーク支社へ転勤になった。準備が出来次第、すぐにむこうへ行かなくてはいけないんだ。」
「…………。」
予想外な重大発表すぎて、何も言葉が出てこないよ…パパ…。
「ごめんな。………あともう一つ報告があるんだ。」
今度は頭をガシガシと掻きながら、少し眉間にシワを寄せているパパ。
まだこれ以上の発表があるの⁇
私はすぅと深呼吸をして「どうぞ」とパパに合図をする。
パパもすぅと深呼吸をしてから話し出した。
「葵も知ってる、美咲さん。彼女と結婚したいんだ。できたらニューヨークへ連れて行きたいと思ってる。」
……え⁈
え??
「えーーーーっっ‼︎」
驚いて思わず大きな声が出てしまった。
パパは真っ赤な顔をして、また頭をガシガシと掻いている。
うそっ⁈
結婚っ⁈
美咲さんと付き合ってるのは知ってるけど…
まさか、結婚だなんて…。
「葵は入学したばかりだから、パパと一緒にニューヨークに行くのは嫌かな?」
ハハ…と苦笑いしながらパパが言った。
正直、頑張って入った学校だから辞めるなんて事はしたくない。
それより…
パパと美咲さんの…結婚は……………
今はまだ、考えられない。
パパには、もちろん幸せになって欲しい。
美咲さんは手に職をちゃんと持っていて自立もしていて、とても綺麗で優しくて…とても素敵な人。
私も大好きな人。
でも、パパが美咲さんと結婚したら…
私はきっと
ひとりぼっちになる。
だって、私は………………
「ごめん、結婚の話しは早過ぎたな。その話しは忘れてくれ。」
黙り込んでしまっていた私に気を遣い、パパは結婚話を取り消した。
「…ごめん、パパ。転勤の事も結婚の事も少し考えさせて。」
私はそれだけをパパに伝えて自分の部屋へ閉じこもった。