オオカミくんと子ブタちゃん
*****


今朝もエプロンをしてキッチンに立つ。

今日の朝ご飯は、おじ様がいるので和食にした。

鮭をグリルに入れて焼いている間に、お味噌汁と煮物を作る。

昨日のおじ様は、お酒をたくさん飲んでいたのでお味噌汁はシジミにした。

「おはよう、葵ちゃん。」

おじ様が新聞を片手に席に着く。

「おはようございます。」

私は、煮物とご飯、味噌汁をテーブルに並べおじ様に挨拶をした。

「お味噌汁のいい香りがするね。昨日は嬉しくて飲み過ぎたから助かるよ。」

おじ様は「いただきます」と手を合わせてから、お味噌汁をすする。

「…美味しい。葵ちゃんはいいお嫁さんになるね。是非とも、 ハルと結婚してウチに嫁いで来て欲しいよ。」

「ひ、飛躍しすぎですよ///。からかわないで下さい。」

「はは…いや、いや、本心だよ。ハルは葵ちゃんが来てから、目に見えて変わったからね。

今までは、この家で眠るなんてこと無かったのに、今はグッスリと眠っているんだから不思議なもんだよ…。

…実はね、離婚した妻が、あまり子供が好きな方ではなくてね。

私の仕事が忙しく家を留守がちだったせいもあって、妻が子育てを放棄してしまったんだ。

しばらくして、妻は若い男を家に連れ込むようになったので、我慢できずに離婚をした。

家事も育児も出来ないような妻だったけど、ハルにとっては母親、それが良かったのかどうかは今でもわからない。

中学に入ったハルは、この家に一人でいる寂しさからか、本当に手がつけれない状態で、よく警察に呼ばれたもんだよ。

家政婦さんを何回も雇ったけど、ハルと上手くいかなくてね、すぐに解雇してしまうんだよ。

ハルにはきっと何か理由があったんだろうけどね。

そんなハルが葵ちゃんと出逢って、こんなにも変わるなんてね。

今のハルはとても幸せそうで……。

本当にありがとう、葵ちゃん。」

おじ様が席を立って深々と頭を下げた。

「や、やめて下さいっ。おじ様。」

私はおじ様に頭を上げようにお願いする。

頭を上げてくれたおじ様は、とても優しい笑顔だったので、なんだか胸がポカポカと暖かくなった。

しばらくして、おじ様は病院から連絡が入り慌てて家を出て行った。

テーブルの食器を片しながら私は思う。

大賀見も寂しい思いをしてきたんだな…

そんな思いをしてきた大賀見だから、これまで私に寄り添って優しくしてくれたのかな。

今日は私が大賀見に優しくしてあげたいと思ってきちゃったよ///

「あっ⁉︎ヤバイッ、大賀見を起こさなきゃ!」

時計を見て驚き、私は急いで大賀見を起こしに行く。

部屋の前でトントン…とノックをしたけど反応が無かった。

まだ寝てるのかなぁ?

「大賀見…入るよ?」

声を掛けてから、そっとドアを開ける。

まだ、ベッドに横たわっている大賀見の姿が見えた。

「大賀見、起きて。遅刻しちゃうよ。」

大賀見の身体を揺さぶりながら声をかける。

「…うるせぇ。」

「きゃっ⁉︎」

突然、腕を掴まれ横たわっている大賀見の腕の中へと引っ張り込まれた。

ぎゅっと大賀見に抱きしめられ、心臓がドキドキと早くなる。

「ちょっとっ///ふざけてないで、早く起きなよ。」

「お前…抱きここち最高ぉ。このまま今日は過ごしてぇくらい。

なぁ、今日は学校休もうぜ。」

耳元で囁く甘い誘惑に負けそうになる。

でも、そんな事は出来ないから…

「な、なに言ってんのよ/// ほらっ起きるよ。」

「じゃあ、もっと優しく起こせよ。」

「……どうやって?」

「お前からキスしてくれたら起きる。」

「なっ⁉︎む、無理だから///」

「じゃあ、起きねぇ。」

プイッと私に背中を向けてしまう大賀見。

大賀見が拗ねるとかって嘘でしょ⁉︎

うーーー

……し、仕方ない。

「わ、わかったから、こっち向いてよ///」

大賀見は「ん」と言って身体を反転させ、私の腰に手をまわした。

すぐ目の前に大賀見の顔がある。

寝起きのせいか、いつもより少し目がトロンとしていて色っぽい。

「目…瞑ってょ///」

私が言うと、そっと長い睫毛を伏せ、目を閉じた大賀見。

ヤバイッ、めちゃ緊張するっ///

私の鼓動はどんどん早くなっていく。

少しずつ距離を縮めていき…

ちゅっ…

そっと唇が触れ合った。

無事に任務を果たし、私が唇を離そうとしたら…

大賀見は私の後頭部を押さえ身動きをとれなくしてから、深く甘いキスを繰り返す。

「んっ……ぁ…ふっ……。」

口の中をコロコロと弄ばれ息があがり、何も考えられなくなる。

やっと解放され、ぼぅとした頭で大賀見を見つめた。

「キスってこうやんだよ。わかった?」

「そ、そんなのっ、出来ないよ///」

「出来るようになるまで、毎日、特訓だな。」

そう言って大賀見は、また私の唇を奪い翻弄していく。

その日、私達が学校に着いたのは時間ギリギリでした。


< 47 / 56 >

この作品をシェア

pagetop