オオカミくんと子ブタちゃん
*****
私はトボトボと下を向いたまま学校へと向かう。
「この大馬鹿女っ!」
どうしてあんなに怒ったの?
「馬鹿かお前はっ。それだけじゃねぇだろっ。」
それだけじゃないって何?
結婚を認めるって私は決めたんだよ。
それをパパに伝えるだけじゃダメなの?
ちゃんと教えてくれなきゃ分からないよ…
「おはよぅ、葵。」
教室へ着くといつも通り、優衣が元気に挨拶をしてきた。
「…おはよー。」
「なぁに?元気ないじゃん。どうしたの?」
私の顔を覗き込む優衣。
「…ん、なんか今朝、大賀見を怒らせちゃって。」
私は隣の席に目をやる。
そこには先に家を出たはずの大賀見の姿は無かった。
「ハルと喧嘩でもしたの?」
キャーと黄色い声と共に教室へ入ってきた滝沢くん。
「おはよ。小辺田さん、桂さん。」
滝沢くんに優しい笑顔を向けられて、張りつめていた緊張の糸が切れそうになる。
「…おはよう、滝沢くん。」
私はなんとか涙を流さずに挨拶をする事ができた。
「何があったの?僕で良かったら話してみて。」
滝沢くんは私の頭を優しく撫でながら、柔らかい瞳で見てくれる。
目頭が熱くなって我慢したはずの涙が零れそうになったとき
「涼介、そいつに軽々しく触れんなよ。」
私はその声と同時に後ろからぎゅっと抱きしめられた。
「おはよ、ハル。」
いつものキラキラスマイルで、何事も無かったように挨拶をした滝沢くんに反して、私は突然に抱きしめられて、どうしたらいいのか分からずに固まっていた。
でも、そんなのお構い無しに大賀見は耳元へ口を近づけてくる。
今朝の意地悪を思い出し、今度は何をされるのかと緊張がはしった。
「今朝は怒鳴ったりして…悪かった。」
そっと私にだけ聞こえるように呟いた大賀見。
ウソ…
あの大賀見が謝ってる?
ゆっくりと大賀見の方へ視線をやると、少し頬を染めてバツの悪そうな顔をしていた。
「ふふ…。」
「なに笑ってんだよ///」
「別にぃ。」
「あっそ///
まぁ、いいや。それより、ちょっと話があるからついてこいよ。」
そう言って私の手を強引に引っ張って行く大賀見。
「ちょっと、待って。」
滝沢くんが私の手首をそっと掴んだ。
私は右手を大賀見に、左手は滝沢くんに掴まれている状態になる。
「さっき、小辺田さんが泣きそうな顔してたけどハルのせい?」
「涼介、その手離せよ。」
「僕、言ったよね?泣かせたら奪うって。」
大賀見の事を鋭い目つきで睨む滝沢くん。
私は二人が喧嘩しないか心配で、オロオロする事しか出来なかった。
「…悪かったよ。もう、泣かせねぇよ。」
大賀見は滝沢くんの目をジッと見たまま答える。
そして………
ゴチンッーーーーー
鈍い音が響いたと思ったら、大賀見は滝沢くんに頭突きをしていた。
「痛った…。」
滝沢くんは涙目で額を手で押さえている。
「何するんだよ、ハルっ。」
「バーカ、涼介は奪い取るなんてことしねぇよ。」
「そんなの、分からないよ。」
「分かるよ。だって、俺が唯一、信用してる男だからな。」
「なっ///」
「照れんなよ、涼介。いつもの余裕がなくなってんぞ。じゃあな」
そう言って「べー」と舌を出してから、大賀見は再び私の手を引いて教室を出て行った。
「あははっ、滝沢くんでもそんな顔するんだねぇ。」
「桂さん…ちょっと酷いな、そんな言い方///」
「ゴメン、ゴメン。それにしても、意外と大賀見って人たらしなんだねぇ。」
「ハハ…。ほんと、敵わないよ。ハルには。」
いつものキラキラスマイルに戻った滝沢くんは、「じゃあね」と言って自分の教室へと戻って行った。
私はトボトボと下を向いたまま学校へと向かう。
「この大馬鹿女っ!」
どうしてあんなに怒ったの?
「馬鹿かお前はっ。それだけじゃねぇだろっ。」
それだけじゃないって何?
結婚を認めるって私は決めたんだよ。
それをパパに伝えるだけじゃダメなの?
ちゃんと教えてくれなきゃ分からないよ…
「おはよぅ、葵。」
教室へ着くといつも通り、優衣が元気に挨拶をしてきた。
「…おはよー。」
「なぁに?元気ないじゃん。どうしたの?」
私の顔を覗き込む優衣。
「…ん、なんか今朝、大賀見を怒らせちゃって。」
私は隣の席に目をやる。
そこには先に家を出たはずの大賀見の姿は無かった。
「ハルと喧嘩でもしたの?」
キャーと黄色い声と共に教室へ入ってきた滝沢くん。
「おはよ。小辺田さん、桂さん。」
滝沢くんに優しい笑顔を向けられて、張りつめていた緊張の糸が切れそうになる。
「…おはよう、滝沢くん。」
私はなんとか涙を流さずに挨拶をする事ができた。
「何があったの?僕で良かったら話してみて。」
滝沢くんは私の頭を優しく撫でながら、柔らかい瞳で見てくれる。
目頭が熱くなって我慢したはずの涙が零れそうになったとき
「涼介、そいつに軽々しく触れんなよ。」
私はその声と同時に後ろからぎゅっと抱きしめられた。
「おはよ、ハル。」
いつものキラキラスマイルで、何事も無かったように挨拶をした滝沢くんに反して、私は突然に抱きしめられて、どうしたらいいのか分からずに固まっていた。
でも、そんなのお構い無しに大賀見は耳元へ口を近づけてくる。
今朝の意地悪を思い出し、今度は何をされるのかと緊張がはしった。
「今朝は怒鳴ったりして…悪かった。」
そっと私にだけ聞こえるように呟いた大賀見。
ウソ…
あの大賀見が謝ってる?
ゆっくりと大賀見の方へ視線をやると、少し頬を染めてバツの悪そうな顔をしていた。
「ふふ…。」
「なに笑ってんだよ///」
「別にぃ。」
「あっそ///
まぁ、いいや。それより、ちょっと話があるからついてこいよ。」
そう言って私の手を強引に引っ張って行く大賀見。
「ちょっと、待って。」
滝沢くんが私の手首をそっと掴んだ。
私は右手を大賀見に、左手は滝沢くんに掴まれている状態になる。
「さっき、小辺田さんが泣きそうな顔してたけどハルのせい?」
「涼介、その手離せよ。」
「僕、言ったよね?泣かせたら奪うって。」
大賀見の事を鋭い目つきで睨む滝沢くん。
私は二人が喧嘩しないか心配で、オロオロする事しか出来なかった。
「…悪かったよ。もう、泣かせねぇよ。」
大賀見は滝沢くんの目をジッと見たまま答える。
そして………
ゴチンッーーーーー
鈍い音が響いたと思ったら、大賀見は滝沢くんに頭突きをしていた。
「痛った…。」
滝沢くんは涙目で額を手で押さえている。
「何するんだよ、ハルっ。」
「バーカ、涼介は奪い取るなんてことしねぇよ。」
「そんなの、分からないよ。」
「分かるよ。だって、俺が唯一、信用してる男だからな。」
「なっ///」
「照れんなよ、涼介。いつもの余裕がなくなってんぞ。じゃあな」
そう言って「べー」と舌を出してから、大賀見は再び私の手を引いて教室を出て行った。
「あははっ、滝沢くんでもそんな顔するんだねぇ。」
「桂さん…ちょっと酷いな、そんな言い方///」
「ゴメン、ゴメン。それにしても、意外と大賀見って人たらしなんだねぇ。」
「ハハ…。ほんと、敵わないよ。ハルには。」
いつものキラキラスマイルに戻った滝沢くんは、「じゃあね」と言って自分の教室へと戻って行った。