オオカミくんと子ブタちゃん
*****


静まり返ったリビング………



「三人で幸せになろうな。」



パパのこの言葉に私は迷っていた。

自分の意思を曲げそうになっていたとき…


「暁人おじさん、少し俺から話してもいいですか?」

大賀見が落ち着いた声でパパに話し掛けた。

涙目のまま大賀見の方を見ると、優しく微笑みかけてくれる。

パパは私の頭をポンポンとしてから、元の場所に戻りソファに座った。

話しができる状態になったと判断した大賀見が言葉を紡ぎ始める。

「このまま、葵さんにここに住んでもらう事は出来ませんか?」

その言葉を聞いてパパは暫く考えたのち

「…春斗くんには悪いけど、僕は家族が離れて住むのは反対なんだ。」

真っ直ぐに大賀見を見て答えた。

「暁人おじさんの気持ちは分かります。俺も出来るならその方がいいと思います。

でも、葵さんの性格上、どうしても暁人おじさんと美咲さんに気を使ってしまうのではないでしょうか?

自分に自信がない葵さんは、自分は邪魔者だと思ってしまって…

きっと、居場所が無くなってしまう。

そんな寂しい辛い想いを俺は葵さんにさせたく無いです。」

「春斗くんは、まだ若い。この先ずっと葵の傍に居られる覚悟はあるの?

今、僕から葵を離そうとするという事はとても重大で責任のある事だよ。」

「…分かってるつもりです。確かに俺はまだ高校生で生活力もありません。

親父に社会人になるまでお世話にならないといけないと思います。

でも、僕は今、葵さんと離れたくないんです。

ずっと傍にいる自信があります。

ストレートで大学を合格して社会人になってから、葵さんと結婚したいと考えています。

どうか、今は頼りない僕ですが、信用して葵さんを預けてくれませんか?」

大賀見はソファから立ち上がり床に正座をして頭を下げた。

「は、春斗くんっ。頭を上げてくれよ。」

パパが慌てて大賀見の肩を掴み上体を起させる。

私は大賀見の予想外な言葉を聞いてパニックになっていた。

だって…さっき、結婚って言った?

そりゃ…私もずっと傍にいたいし、この先、大賀見以外の男の人を好きになるなんて考えられない。

でも、まさか、大賀見がそこまで考えてくれていたなんて…

「葵の気持ちはどうなの?」

パパは優しく私に問いかける。

私……は………

「私もずっと大賀見と一緒にいたい。」

パパの目を真っ直ぐに見て力強く答えた。

パパは下を向き、頭をガシガシッと掻いたまま黙ってしまう。

再び静まり返ったリビング…

今度、この沈黙を破ったのはおじ様だった。

「うん、うん、難しい問題だね。
ちょっと、外に呑みに行でも行こうか、暁人。
ハル、悪いけど葵ちゃんと二人で留守番頼むよ。」

そう言っておじ様はパパを連れて家を出て行った。

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