オオカミくんと子ブタちゃん
私の居場所
朝起きてカーテンを開けると、眩しいくらいの光が部屋へ入ってくる。
「…いいお天気。」
私は、ふぁ…と欠伸をしながら着替えを済ませる。
昨夜もあまり眠れなかった。
パパはおじ様と何を話して、どんな決断をしたんだろう?
やっぱり、美咲さんと私をニューヨークへ連れて行くつもりなのかな?
それとも…このまま、この家で大賀見と一緒にいられるのだろうか?
私はドキドキしながらリビングへ向かう。
「おはよう、葵。」
リビングに入るとパパがもう起きていて、ソファで新聞を読んでいた。
「おはよ、パパ。早いね。」
私は笑顔で挨拶をする。
「はは…なんか久しぶりに、葵のご飯が食べれると思うと嬉しくて目が覚めちゃったよ。」
頭をクシャクシャとしながら照れ笑いしているパパ。
「へへ…嬉しい。今から作るから少し待っててね。」
私はエプロンをしてキッチンへ入った。
昨日、パパ達はお酒を飲んできてるから…あっさりした物がいいよね?
私は手際よく何品かおかずを作っていく。
フグの一夜干し、法蓮草のお浸しに出し巻き玉子、香の物にご飯とお味噌汁。
全て出来上がったとき、おじ様と大賀見も起きてきて、皆んなで食卓につく。
他愛もない会話をしながら楽しく朝食をとった後、パパがあの話を切り出した。
「昨日の話しの続きなんだけど…いいかな?」
「…うん。」
笑顔で答えたいのに緊張と不安で上手く笑えないでいると、隣に座っていた大賀見の手が伸びてきて私の手をぎゅっと握った。
そして、とても柔らかい笑顔を向けてくれる。
私もそれにつられて自然と笑顔になれた。
「はは…敵わないな。」
私達のやりとりを見てパパが苦笑いをしながら言った。
「え?何が?」
私はパパの言っている意味がわからず首を傾げる。
「僕の負けだよ。
春斗くん、葵のこと、よろしくお願いします。」
パパは席を立ち深々と頭を下げた。
「暁人おじさんっ、頭を上げて下さいっ。」
昨日とは逆で、今度は大賀見が慌ててパパの上体を起こす。
ーーーえ?
私、この家に居ていいの?
大賀見の傍に居ていいの?
「…パパ?」
「葵、ご迷惑をかけないようにするんだよ。それと、春斗くんに大切にしてもらいなさい。」
パパはニッコリと優しく穏やかな笑顔で言ってくれた。
「…はい。パパも美咲さんと幸せになってね。」
笑顔で答えたけど、無意識に涙がポロポロと落ちる。
どうしようもない気持ちが込み上げて来て、私は立ち上がりパパの隣へ駆け寄った。
「パパ、ありがとうっ。」
ぎゅっとパパに抱きつくと、パパも私をぎゅっと抱きしめてくれる。
「離れていても、これからもずっと葵は僕の大切な娘だ。
そのことは、絶対に忘れないで。
葵…愛してるよ。」
「私もっ、愛してるよ、パパ。」
もう、不安になったりしないよ。
パパにこんなに愛されてるってわかったから…
ありがとう…パパ。