オオカミくんと子ブタちゃん
*****
リビングのカーテンを開け、空を見上げる。
今朝の空は私の心と同じ曇天模様…
「今日は傘を持ってお出掛け下さい」テレビから聞こえるお天気お姉さんの声…
パパの鞄に折りたたみの傘を入れておかないと…。
忘れ物の多い人だから、たぶん伝えても忘れて行っちゃうもんね。
私は玄関に用意されている大きなキャリーバッグに、折りたたみの傘を入れる。
パパ…私が居なくても大丈夫かな?
はぁ…
昨日の事を思い出して、無意識に溜め息が出てしまう。
昨夜、話し合った結果、パパはニューヨークへ、私はパパの親友の家でお世話になる事が決まり一ヶ月間パパとは別々に暮らすことになった。
パパは仕事が落ち着くであろう一ヶ月後に、一度日本へ戻って来るらしい。
その時に、今後どうするのかをきちんと決めようという事になった。
本当は今すぐにでも、美咲さんとの結婚を認めてあげる方がいいのは分かってるんだ。
でも…頭では分かってるけど、気持ちがついてこないの…。
パパはママの事をもう愛していないの?
私は邪魔者なんじゃないの?
なんて色んな気持ちが込み上げてきちゃって、上手く整理できない。
はぁ…
また溜め息が出てしまう。
こんなんじゃダメだっ!
ブルブルと私は頭を横に振って、暗い自分を吹き飛ばす。
私はパパの為にいつも笑顔でいなきゃダメ。
それがママが亡くなってからの、パパとの唯一の約束だから。
私は頬をパンッと叩き、気合いを入れる。
「よしっ!パパの為に、美味しい朝ごはんを作るぞっ!」
椅子に掛けてあるエプロンを着けてキッチンに立つ。
フルーツにサラダ、スクランブルエッグにトースト、そしてパパの好きなコーヒー。
パパに朝ごはんを作ってあげるのも、これで終わりなんだなぁ…。
ーーチンッ…
トースターの音が鳴りパンが焼けた頃、ちょうどパパが背伸びをしながらダイニングへと入ってきた。
「おはよう、葵。」
「おはよう、パパ。」
いつものように、お互い挨拶をしてから席に着く。
私は焼けたパンにバターを塗ってパパに渡す。
パパは「ありがとう」と言って受け取り、パクッと一口パンをかじった。
なんとなく元気のないパパ…。
パパは私が一人暮らしをする事を反対していた。
私はこのマンションに一人で暮らそうと思ってたのだけど、パパが危ないからと親友に連絡を取って同居のことをお願いした。
パパの親友は理由を説明すると快諾してくれて、明日から私はその人の家で暮らすことになっている。
パパの親友は総合病院の先生なんだけど、奥さんとは二年前に離婚をしていて、今はハルちゃんという子供と二人暮らしをしているらしい。
パパの親友は仕事上ほとんど家に帰れないらしく、私が一緒に住んでくれると子供を一人にすることが無くなるので、助かると言ってくれている。
「葵…本当にパパと一緒に来なくていいんだね?」
心配そうに眉を下げるパパ。
「うん…ゴメンね、パパ。」
一ヶ月後には、必ず気持ちの整理をつけるから…今は私の我儘を許してね。
最後の朝食を食べ終わり、しばらくすると家を出る時間がやってきた。
「いってらっしゃい、パパ。」
「いってきます。」
パパが優しく笑って玄関を出て行く。
私も笑顔で手を振って見送った。
パタン…とドアが閉まり家の中が急に静まり返った。
朝のお見送りもこれで終わり。
今度、パパに会えるのは一ヶ月後…
どんどん寂しい気持ちが込み上げてきて、涙が溢れそうになる。
でも…
まだ泣かない。
私は大丈夫。
いつもそうやって自分に言い聞かせてきたんだから…
リビングのカーテンを開け、空を見上げる。
今朝の空は私の心と同じ曇天模様…
「今日は傘を持ってお出掛け下さい」テレビから聞こえるお天気お姉さんの声…
パパの鞄に折りたたみの傘を入れておかないと…。
忘れ物の多い人だから、たぶん伝えても忘れて行っちゃうもんね。
私は玄関に用意されている大きなキャリーバッグに、折りたたみの傘を入れる。
パパ…私が居なくても大丈夫かな?
はぁ…
昨日の事を思い出して、無意識に溜め息が出てしまう。
昨夜、話し合った結果、パパはニューヨークへ、私はパパの親友の家でお世話になる事が決まり一ヶ月間パパとは別々に暮らすことになった。
パパは仕事が落ち着くであろう一ヶ月後に、一度日本へ戻って来るらしい。
その時に、今後どうするのかをきちんと決めようという事になった。
本当は今すぐにでも、美咲さんとの結婚を認めてあげる方がいいのは分かってるんだ。
でも…頭では分かってるけど、気持ちがついてこないの…。
パパはママの事をもう愛していないの?
私は邪魔者なんじゃないの?
なんて色んな気持ちが込み上げてきちゃって、上手く整理できない。
はぁ…
また溜め息が出てしまう。
こんなんじゃダメだっ!
ブルブルと私は頭を横に振って、暗い自分を吹き飛ばす。
私はパパの為にいつも笑顔でいなきゃダメ。
それがママが亡くなってからの、パパとの唯一の約束だから。
私は頬をパンッと叩き、気合いを入れる。
「よしっ!パパの為に、美味しい朝ごはんを作るぞっ!」
椅子に掛けてあるエプロンを着けてキッチンに立つ。
フルーツにサラダ、スクランブルエッグにトースト、そしてパパの好きなコーヒー。
パパに朝ごはんを作ってあげるのも、これで終わりなんだなぁ…。
ーーチンッ…
トースターの音が鳴りパンが焼けた頃、ちょうどパパが背伸びをしながらダイニングへと入ってきた。
「おはよう、葵。」
「おはよう、パパ。」
いつものように、お互い挨拶をしてから席に着く。
私は焼けたパンにバターを塗ってパパに渡す。
パパは「ありがとう」と言って受け取り、パクッと一口パンをかじった。
なんとなく元気のないパパ…。
パパは私が一人暮らしをする事を反対していた。
私はこのマンションに一人で暮らそうと思ってたのだけど、パパが危ないからと親友に連絡を取って同居のことをお願いした。
パパの親友は理由を説明すると快諾してくれて、明日から私はその人の家で暮らすことになっている。
パパの親友は総合病院の先生なんだけど、奥さんとは二年前に離婚をしていて、今はハルちゃんという子供と二人暮らしをしているらしい。
パパの親友は仕事上ほとんど家に帰れないらしく、私が一緒に住んでくれると子供を一人にすることが無くなるので、助かると言ってくれている。
「葵…本当にパパと一緒に来なくていいんだね?」
心配そうに眉を下げるパパ。
「うん…ゴメンね、パパ。」
一ヶ月後には、必ず気持ちの整理をつけるから…今は私の我儘を許してね。
最後の朝食を食べ終わり、しばらくすると家を出る時間がやってきた。
「いってらっしゃい、パパ。」
「いってきます。」
パパが優しく笑って玄関を出て行く。
私も笑顔で手を振って見送った。
パタン…とドアが閉まり家の中が急に静まり返った。
朝のお見送りもこれで終わり。
今度、パパに会えるのは一ヶ月後…
どんどん寂しい気持ちが込み上げてきて、涙が溢れそうになる。
でも…
まだ泣かない。
私は大丈夫。
いつもそうやって自分に言い聞かせてきたんだから…