オオカミくんと子ブタちゃん
*****
「おはよぉ、葵。」
教室に入ると優衣が笑顔で挨拶をしてくれた。
今日の優衣も可愛いっ///
「おはよう、優衣。」
私は机の上に鞄を置き、朝買ってきた苺ミルクを取り出し優衣に渡す。
「はい、約束の苺ミルク。」
「うわっ、本当に買ってきてくれたんだぁ。ありがとうっ。」
嬉しそうに苺ミルクを両手で持って、キュルンとした笑顔を私に向けた。
「優衣…激カワ///」
「何言ってんのぉ」と優衣は笑いながらストローを挿し、美味しそうに苺ミルクを飲んでいる。
ふと隣に目をやると、大賀見が机に伏せてスヤスヤと眠っていた。
窓から射す光が彼の綺麗な髪をキラキラとさせ、より目立つ存在にしている。
そんな彼の姿に周りの女子達が釘付けになっていた。
「それで、どうなったのぉ?」
チューと苺ミルクを飲みながら、優衣が聞いてくる。
「どうなったって何が?」
質問の意図はわかってるけど、なんとなく恥ずかしくてトボけてみた。
「わかってるくせにぃ」とニヤニヤしながら、指で私の腕をツンツンとしてくる優衣。
「別に普通に送ってもらっただけだよ。」
「なぁんだ、少しは甘い事でもあったかな?なんて思ってたのに、残念。」
何を期待していたのだ?優衣…
「会ったばかりなのに、そんな雰囲気になるわけないでしょ。」
「協力しがいが無いな、葵はぁ。」
優衣がぷぅと頬を小さく膨らました。
その可愛い顔に周りの男子が釘付けになっているのに気付く。
この席、前も横もラブ光線を集め過ぎっ。
しかも、当の本人達は全くその光線を無視してるしっ。
はぁ…この席ってある意味、地獄だな。
私が優衣の幸せそうに苺ミルクを飲んでいる姿を見ていると、廊下からキャーキャーと黄色い声が聞こえてきた。
ーーーん?
大賀見はここで寝てるのに、なんで廊下から黄色い声が聞こえてくるんだろ?
ガラガラ…と教室のドアが開く。
さっきまで大賀見をうっとりとした目で見ていた女子達の視線が、一斉にドアへと集中して入ってきた人物を確認したとたん、キャーと黄色い声をあげる。
私もドアを開けた人物を見て驚いた。
艶やかな黒髪にくっきりとした二重…
ーーー滝沢くんっ⁈
滝沢くんが大賀見の席までやって来て、寝ている大賀見の頭に手を当てた。
「ハル、起きてよ。」
大賀見が眠そうな顔を机からあげる。
「なんだよ…涼介。」
頭に当てられている手を乱暴に振り払う大賀見。
え?なに?二人は友達なの⁇
嘘っ⁈全然タイプが違うじゃんっ。
乱暴に手を振り払われても、気にしていない様子の滝沢くん…
「昨日のDVD返しに来たんだ。すごく面白かったよ。続きを早く見たいんだけど持ってる?」
「おう、次のやつはもっと複雑でおもしれー。」
「ホント?楽しみだなぁ。」
滝沢くんが楽しそうに大賀見と話していて、ふとこっちを向いた。
その時、滝沢くんは私の存在に初めて気が付いたようだった。
「あ…小辺田さんに…桂さん、おはよう。二人ともハルの席の近くだったんだね。」
朝からキラキラスマイルで挨拶をしてくれる滝沢くん。
「お、おはよう。滝沢くん。」
私も優衣も笑顔で挨拶を返した。
「ふふふ…。」
優衣は両手で口を隠し、ニタニタとした顔でこっちを見ている。
顔も仕草も可愛いのに、たまに優衣ってばオジさんぽくなるよね…。
ーーーってか?
なに?
DVDを返しに来たって言った?
ーーーて事は…………………
「もしかして…滝沢くんの幼なじみって大賀見のこと⁈」
「うん、そうだよ。ハルとは幼稚園の頃から一緒なんだ。ねっ、ハル。」
滝沢くんが大賀見へ視線を戻した。
大賀見は「腐れ縁だろ」と言って、また机に伏せて寝ようとしている。
どんだけ寝るんだ?コイツ…
そっか…大賀見が滝沢くんの幼なじみかぁ。
たしか、女の子が苦手って言ってたよね?
ん〜…コレは苦手というのかな?
どっちかというと女嫌いって感じ?
大賀見を見ながら、そんなことを思っていると
ガラガラ…
また誰かが教室へと入っていた。
「あ〜っ春斗くん見つけたぁ。探したんだよぉ〜。」
一人の女の子が、大賀見の席までトコトコと可愛く小走りしてきた。
サラサラのボブカットで、クリクリした瞳にアヒル口…典型的なブリっ子?って感じ。
でも…なんか見たことがあるような…?
「春斗く〜ん、起きてぇ〜。」
ブリっ子ちゃんが大賀見の肩を可愛く揺らしている。
「なんだよっ、うるせぇな…。」
不機嫌そうに顔をあげた大賀見が、女の子の姿を見て更に不機嫌になる。
「誰だよ、お前。」
「またぁ、そんなこと言ってぇ〜。茉莉花だよぉ。」
え?
「茉莉花ちゃん⁈」
私は思わず声に出してしまって、咄嗟に口を押さえた。
思い出したっ。
沢口 茉莉花(さわぐち まりか)
お母さんの妹の娘。
お母さんのお葬式以来、会ってなかったから全くわからなかった。
「…え?もしかして、葵ちゃん??」
「…うん。」
同じ学校だったんだ…。
出来れば会いたくなかったのにな…。
「久しぶりだねぇ〜。まだあのお父さんと二人で住んでるのぉ〜?」
チクッ…
やっぱり、茉莉花ちゃんは苦手だ…。
この子といると、いつも胃が痛くなる。
「うん。」
私はチクチクする胃に手を当てながら、返事をした。
「茉莉花ちゃん、他のクラスに我が物顔で入ってくるのってどうかと思うよぉ。」
優衣が私と茉莉花ちゃんの間に入って、ニッコリと笑って言った。
その笑顔…ちょっと怖いよ、優衣。
優衣を見て勝てないと思ったのか、茉莉花ちゃんは少し萎縮しているみたい。
「…うざっ。」
大賀見がガラッと乱暴に椅子から立ち上がり、教室を出て行ってしまった。
茉莉花ちゃんも「待ってよぉ〜」と甘えた口調で、大賀見のあとを追って教室を出て行く。
そんな茉莉花ちゃんの行動を見て「なんなのよっ、あの子」と優衣が 両手を腰に当ててプリプリと怒っている。
「ごめんね…優衣。」
「葵が謝ることないよ。」
優衣は私の頭を優しく撫でてくれる。
「小辺田さんと沢口さんって知り合いだったんだね。」
珍しく滝沢くんが苦笑いをしながら、私たちに近づいてきた。
「…うん。っていうか、茉莉花ちゃんとは従姉妹なんだ。」
「…そうなんだ。あまり似てないね。」
滝沢くんの優しい笑顔にホッと癒される。
「ねぇ、滝沢くん。あの子と大賀見ってどういう関係なの?」
優衣がまだ少し不機嫌そうな顔で、滝沢くんに質問した。
「そうだね…沢口さんとは同じ中学で、昔ハルにこっ酷く振られてるはずなんだけど、ずっとハルの事をあんな風に追いかけてるんだよね。」
眉を下げてハハ…とまた苦笑いをする滝沢くん。
大賀見が隣の席である限り、茉莉花ちゃんとは顔を合わせないといけなさそうだな…。
はぁ……
溜息をつきながら空を見上げると、灰色の雲から雨がパラパラと降り出した。
朝のHRが始まっても大賀見は教室に帰って来なかったので、担任の小林くんが「くそガキ」と笑顔で毒を吐いていた。
顔に似合わず毒舌なところ…優衣と似てるかも?
大賀見は一限目以降からはきちんと出席していて、休み時間になるとすぐに教室を出て行き、授業が始まるギリギリの時間に教室へと戻ってきていた。
休み時間になる度に、茉莉花ちゃんが教室を覗きに来ていたので、大賀見は茉莉花ちゃんを避けるために、そういう行動をしてたみたい。
ハハ…よほど茉莉花ちゃんが苦手なんだね。
私は朝より暗くなった空を見上げる。
時間が経つにつれて、雨はどんどん強くなっていった。
「おはよぉ、葵。」
教室に入ると優衣が笑顔で挨拶をしてくれた。
今日の優衣も可愛いっ///
「おはよう、優衣。」
私は机の上に鞄を置き、朝買ってきた苺ミルクを取り出し優衣に渡す。
「はい、約束の苺ミルク。」
「うわっ、本当に買ってきてくれたんだぁ。ありがとうっ。」
嬉しそうに苺ミルクを両手で持って、キュルンとした笑顔を私に向けた。
「優衣…激カワ///」
「何言ってんのぉ」と優衣は笑いながらストローを挿し、美味しそうに苺ミルクを飲んでいる。
ふと隣に目をやると、大賀見が机に伏せてスヤスヤと眠っていた。
窓から射す光が彼の綺麗な髪をキラキラとさせ、より目立つ存在にしている。
そんな彼の姿に周りの女子達が釘付けになっていた。
「それで、どうなったのぉ?」
チューと苺ミルクを飲みながら、優衣が聞いてくる。
「どうなったって何が?」
質問の意図はわかってるけど、なんとなく恥ずかしくてトボけてみた。
「わかってるくせにぃ」とニヤニヤしながら、指で私の腕をツンツンとしてくる優衣。
「別に普通に送ってもらっただけだよ。」
「なぁんだ、少しは甘い事でもあったかな?なんて思ってたのに、残念。」
何を期待していたのだ?優衣…
「会ったばかりなのに、そんな雰囲気になるわけないでしょ。」
「協力しがいが無いな、葵はぁ。」
優衣がぷぅと頬を小さく膨らました。
その可愛い顔に周りの男子が釘付けになっているのに気付く。
この席、前も横もラブ光線を集め過ぎっ。
しかも、当の本人達は全くその光線を無視してるしっ。
はぁ…この席ってある意味、地獄だな。
私が優衣の幸せそうに苺ミルクを飲んでいる姿を見ていると、廊下からキャーキャーと黄色い声が聞こえてきた。
ーーーん?
大賀見はここで寝てるのに、なんで廊下から黄色い声が聞こえてくるんだろ?
ガラガラ…と教室のドアが開く。
さっきまで大賀見をうっとりとした目で見ていた女子達の視線が、一斉にドアへと集中して入ってきた人物を確認したとたん、キャーと黄色い声をあげる。
私もドアを開けた人物を見て驚いた。
艶やかな黒髪にくっきりとした二重…
ーーー滝沢くんっ⁈
滝沢くんが大賀見の席までやって来て、寝ている大賀見の頭に手を当てた。
「ハル、起きてよ。」
大賀見が眠そうな顔を机からあげる。
「なんだよ…涼介。」
頭に当てられている手を乱暴に振り払う大賀見。
え?なに?二人は友達なの⁇
嘘っ⁈全然タイプが違うじゃんっ。
乱暴に手を振り払われても、気にしていない様子の滝沢くん…
「昨日のDVD返しに来たんだ。すごく面白かったよ。続きを早く見たいんだけど持ってる?」
「おう、次のやつはもっと複雑でおもしれー。」
「ホント?楽しみだなぁ。」
滝沢くんが楽しそうに大賀見と話していて、ふとこっちを向いた。
その時、滝沢くんは私の存在に初めて気が付いたようだった。
「あ…小辺田さんに…桂さん、おはよう。二人ともハルの席の近くだったんだね。」
朝からキラキラスマイルで挨拶をしてくれる滝沢くん。
「お、おはよう。滝沢くん。」
私も優衣も笑顔で挨拶を返した。
「ふふふ…。」
優衣は両手で口を隠し、ニタニタとした顔でこっちを見ている。
顔も仕草も可愛いのに、たまに優衣ってばオジさんぽくなるよね…。
ーーーってか?
なに?
DVDを返しに来たって言った?
ーーーて事は…………………
「もしかして…滝沢くんの幼なじみって大賀見のこと⁈」
「うん、そうだよ。ハルとは幼稚園の頃から一緒なんだ。ねっ、ハル。」
滝沢くんが大賀見へ視線を戻した。
大賀見は「腐れ縁だろ」と言って、また机に伏せて寝ようとしている。
どんだけ寝るんだ?コイツ…
そっか…大賀見が滝沢くんの幼なじみかぁ。
たしか、女の子が苦手って言ってたよね?
ん〜…コレは苦手というのかな?
どっちかというと女嫌いって感じ?
大賀見を見ながら、そんなことを思っていると
ガラガラ…
また誰かが教室へと入っていた。
「あ〜っ春斗くん見つけたぁ。探したんだよぉ〜。」
一人の女の子が、大賀見の席までトコトコと可愛く小走りしてきた。
サラサラのボブカットで、クリクリした瞳にアヒル口…典型的なブリっ子?って感じ。
でも…なんか見たことがあるような…?
「春斗く〜ん、起きてぇ〜。」
ブリっ子ちゃんが大賀見の肩を可愛く揺らしている。
「なんだよっ、うるせぇな…。」
不機嫌そうに顔をあげた大賀見が、女の子の姿を見て更に不機嫌になる。
「誰だよ、お前。」
「またぁ、そんなこと言ってぇ〜。茉莉花だよぉ。」
え?
「茉莉花ちゃん⁈」
私は思わず声に出してしまって、咄嗟に口を押さえた。
思い出したっ。
沢口 茉莉花(さわぐち まりか)
お母さんの妹の娘。
お母さんのお葬式以来、会ってなかったから全くわからなかった。
「…え?もしかして、葵ちゃん??」
「…うん。」
同じ学校だったんだ…。
出来れば会いたくなかったのにな…。
「久しぶりだねぇ〜。まだあのお父さんと二人で住んでるのぉ〜?」
チクッ…
やっぱり、茉莉花ちゃんは苦手だ…。
この子といると、いつも胃が痛くなる。
「うん。」
私はチクチクする胃に手を当てながら、返事をした。
「茉莉花ちゃん、他のクラスに我が物顔で入ってくるのってどうかと思うよぉ。」
優衣が私と茉莉花ちゃんの間に入って、ニッコリと笑って言った。
その笑顔…ちょっと怖いよ、優衣。
優衣を見て勝てないと思ったのか、茉莉花ちゃんは少し萎縮しているみたい。
「…うざっ。」
大賀見がガラッと乱暴に椅子から立ち上がり、教室を出て行ってしまった。
茉莉花ちゃんも「待ってよぉ〜」と甘えた口調で、大賀見のあとを追って教室を出て行く。
そんな茉莉花ちゃんの行動を見て「なんなのよっ、あの子」と優衣が 両手を腰に当ててプリプリと怒っている。
「ごめんね…優衣。」
「葵が謝ることないよ。」
優衣は私の頭を優しく撫でてくれる。
「小辺田さんと沢口さんって知り合いだったんだね。」
珍しく滝沢くんが苦笑いをしながら、私たちに近づいてきた。
「…うん。っていうか、茉莉花ちゃんとは従姉妹なんだ。」
「…そうなんだ。あまり似てないね。」
滝沢くんの優しい笑顔にホッと癒される。
「ねぇ、滝沢くん。あの子と大賀見ってどういう関係なの?」
優衣がまだ少し不機嫌そうな顔で、滝沢くんに質問した。
「そうだね…沢口さんとは同じ中学で、昔ハルにこっ酷く振られてるはずなんだけど、ずっとハルの事をあんな風に追いかけてるんだよね。」
眉を下げてハハ…とまた苦笑いをする滝沢くん。
大賀見が隣の席である限り、茉莉花ちゃんとは顔を合わせないといけなさそうだな…。
はぁ……
溜息をつきながら空を見上げると、灰色の雲から雨がパラパラと降り出した。
朝のHRが始まっても大賀見は教室に帰って来なかったので、担任の小林くんが「くそガキ」と笑顔で毒を吐いていた。
顔に似合わず毒舌なところ…優衣と似てるかも?
大賀見は一限目以降からはきちんと出席していて、休み時間になるとすぐに教室を出て行き、授業が始まるギリギリの時間に教室へと戻ってきていた。
休み時間になる度に、茉莉花ちゃんが教室を覗きに来ていたので、大賀見は茉莉花ちゃんを避けるために、そういう行動をしてたみたい。
ハハ…よほど茉莉花ちゃんが苦手なんだね。
私は朝より暗くなった空を見上げる。
時間が経つにつれて、雨はどんどん強くなっていった。