川に流るる紅い毛の…
子狐様豊穣伝説ー哀の章ー
あの事件の翌日、村を巻き込んでの葬式が行われた。もちろん、お狐も参加した。
お狐が小さき頃彼の生き甲斐であった村人達の笑顔は、すっかり消えてしまっていた。お狐は目に涙を貯め、涙はポツリとおちる。お狐の翡翠のような瞳から流るる蒼き粒はお狐の紅い毛を湿らせた。
視界が涙で埋め尽くされる前に昨晩腰を抜かしていた村人がお狐の前に立っていた。
「………た……だ……た………だ」
「お狐様、こいつあ気でも狂ったんでしょう。ああ可哀想に」
とかなり大柄な村人がそういった刹那、
「うるせぇ!あんたがぁおいらの妻さぁ喰っただろ!!!??」
お狐は驚きの余りに少し止まってしまった。
周りにいた村人はざわめく。
お狐様が喰ったんだって…?
…そんなわけないね…
…確かに狐だもんなあ…
それからというもの、お狐は人々の目に当たるのが怖くなってしまった。
僕は…何の為に働いたのだろうか…。と。