川に流るる紅い毛の…

子狐様豊穣伝説ー小川の章

冷たい水が、子狐の体を舐めるように洗っていく。昨晩見た子狐の体を紅く染めていた血は、川の清流に流されてしまったようだ。
子狐の金色の毛が姿を見せる。子狐は少し安心したようだった。

子狐が小川のそばで少し日向ぼっこをして毛を乾かしていると、小川のそばでうなだれている老人を見つけた。

子狐はすぐにニンゲンだと気づくと木々に隠れながらニンゲンを観察した。

老人は最後のおにぎりを一欠片食べるとこれでおしまいか…と小さく呟き、寝込んでしまった。

まだ小さき子狐は興味津々でニンゲンを観察した。顔はかなりやつれている人間を見て、彼は木々に実っていた木の実をたくさんとってニンゲンの足元に置いた。

ニンゲンさん、ゆっくり休んでね…

そうして、彼は新しい居所を探そうと思ったときであった。彼の体を覆い尽す程の影が彼を包み込んだ。

う、うわぁ…！！！！

「そんなに驚くでない。子狐や」

子狐は倒れてしまった。

子狐は初めて人間の大きさを体感したのだ。昨晩程の恐怖ではないが、彼はここ数日間の恐怖の連続で衰弱してしまったようだ…。