川に流るる紅い毛の…
子狐様豊穣伝説ー怒の章ー
そんなある日のこと。
子狐はもう立派に成長し、もう子狐というよりお狐様と呼ばれるような体になっていた。お狐は今日もよく働いたと幸せを噛み締め、ふわふわとした寝床へ着こうとした時であった。
キャーーー!
耳を劈くような断末魔の声が村にこだまする。暗闇に囚われていた村は、ぽつぽつと光を灯らしていく。
村人はぞろぞろと声の元の家へと向かった。玄関には腰を抜かした若者がひとり肩と歯を震わせ、村人に訴えていた。村人曰く、
「………ウグッ………紅き人影が……おいらの妻さァ…喰った…」
あまりの悲惨さ故に泣き出したり、震え出したり、吐いてしまう者もいた。
村人が名乗る彼の妻と思しき遺体はもう特定することも出来ないくらいであった。
お狐はこの事件を人が行ったのではないと判断した。
確証はない、お狐のカンである。