わかってるよ
「おはよう!!」

「おはよ〜」

「おはよう!花ちゃん!」

昔から私に挨拶してくれる人なんていなかった。

みんな、私の隣で無邪気に笑うこの子に挨拶して通り過ぎてくの。

私なんて見えてないみたいに。

「おはよ、花。柚。」

「お!おはよ!花。柚。」

「あ、おはよう!慧!悠!」

「おはよ。」

ほら、このふたりも見えてない。

幼馴染みの慧と悠。

このふたりも双子なんだ。

家が隣同士で、生まれた時からずっと一緒。

だけど、前を歩く2人は、いつものように真ん中にいる花を守るように歩く。

そして私はちょっと離れて後ろを歩く。

3人の邪魔をしないように、視界に入らないように。

いつからだろう。

こんなに下を向いて、三人から目をそらすように歩き始めたのは。

花は、可愛い。

ぱっちり2重で、ぽってりとした唇。

ほんのりピンク色をした頬。

ふわふわでさらさらの髪。

「柚!はやくはやく!遅れちゃうよ?」

ほら、あのえくぼ。

「うん!今行く。」

そして、決定的に私と違うところ、性格。

花がいるだけで、教室が明るくなったような気がする。そんな存在。

私はそのまぶしさに目を細めて、ほんとに双子なの?って思ってる。

逆に私は、クラスでもすみっこに座って、ずっと本を読んでる。

だから、友達なんていないんじゃないかな。

辛い。

そんなこと思っちゃいけない。

わかってる。

そう割り切らないと、だめなのに。

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