わかってるよ
相変わらず、前の3人は楽しそう。

ちょっと前までは、私もあの中に加わりたいって思って横に並んでみたりした。

けど、おんなじスピードで歩いてるのに、3人に置いていかれてるような気がして諦めてしまった。

私を抜いた3人で特別な絆があるような、そんな気がして、もうそこに入ろうなんて考えることすらしなくなった。

「また明日な。」

「ふたりともばいばーい!」

「うん、また明日!」

「...じゃ、じゃあ。」

ガチャ...ガチャン

スッと体が冷えていくのを感じた。

あ...花が怒ってる。

そう、この感覚は花が何かに対して怒っているときにでるんだ。

双子のテレパシーみたいなやつなのかな。

よく分からないけど、とりあえず花は何かに怒ってる。

「柚。」

「ん?何?」

「柚は...。いや、何でもない。ごめんね、気にしないで?」

バタバタバタバタ...

行っちゃった。何だろう。

今日はみんなちょっとおかしい...。

そう、私は気づいていなかった。

この時、誰が何を思ってどんな気持ちで過ごしていたかを。

そんなこと知ろうともしなかった。

この時にみんなの想いに気づいていれば、今の私たちはもっと違う関係でいられたのかな。

何も知らないのは私だけだった。

今ならわかる。

慧と悠が必死で守っていたのは、ふたりの間にいた花じゃなくて、三人の後でうつむいていた私だったことに。

なんにも気づいていなかった。

わかってるよ。

そんな言葉で自分を守って、何もかも分かったふりして諦めてた。

もう後悔なんてしても遅いのに。

そんなことも、わかってるよ。

わかってるよ。
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