笑顔のチカラ~笑う門には福来る~
お兄ちゃん大丈夫かな。
あの人、かなり我慢強いから…
「……美…笑美ってば!」
「え、あっ!ごめん、何?」
ふと我に返ると、目の前には私の机に頬杖ついて不思議そうに見つめる女の子がいた。
桜木 加奈(さくらぎ かな)
小学校からずっと仲がよくて、私の親友。
「どうしたの笑美。なんかボーッとして」
「いやぁ…あのね、お兄ちゃんが具合悪いのに朝練に行っちゃったから心配で……」
「そうなの?笑美はお兄さん思いだね」
加奈、ナイスフォロー!
私はお兄ちゃん思いってより、ただの心配性。
たった1人の血の繋がった家族だもん。
何かあったら…って考えるとすごく不安になるの。
「でも何で朝練なんかに行ったんだろうね。
具合悪くなりたいのかな?」
「お兄ちゃん、サッカー命!って人だから仕方ないよ。
まぁでも、大好きなサッカーしたら治るかも!」
「そっか!笑美がそう言うなら大丈夫かもね!」
「うん!」
そう笑っていられるのも今のうちだけだった。
ガラガラ
「春野さん、すぐ保健室に来てちょうだい」
「えっ?」
保健室の先生から呼ばれた。
いつもの穏やかな顔ではなく、少し険しい顔をしている。
まさか……!
不安を感じるより先に、体が動いていた。
急いで階段を駆け降りて、保健室に飛び込んだ。
一番奥のベッドに横になっていたのは、やっぱりお兄ちゃん。
でも、なんか様子が変……
「さっき、階段から落ちたみたいなの。
軽い脳震盪をおこしてるけど、時期に目が覚めると思うわ。
でも、頭を打ってたらいけないから、病院で検査を受けておきましょう。
先生が送っていくから、あなたも早く準備してきて?」
「は、はい……!」
先生の話す言葉、あまり聞き取れなかった。
私の頭の中は、お兄ちゃんのことがグルグル回っていた。
もう、あれほど無理するなって言ったのに……