笑顔のチカラ~笑う門には福来る~
【清南総合病院】
あれから病院に着いて、色々検査をするための部屋に移されたお兄ちゃん。
でも、目が覚めることはなかった。
このまま意識が戻らなかったら……
そう考えると震えが止まらなくなる。
大丈夫だよね、お兄ちゃん…
「春野さん、中へどうぞ」
部屋のドアが開いて、中から看護師さんに声をかけられた。
「あの、お兄…兄は大丈夫ですか?」
「今、目を覚ましましたよ。中に入って、顔を見せてあげてください」
「あ、よかった…」
「…笑美」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「うん、ごめんな、心配かけて」
「ほんとだよ。でも、良かった」
普通に話すことができて安心した。
でも、階段から落ちた記憶がないらしいの。
意識が戻ったのは嬉しいけど、大事に至らないといいな。
トントン
「失礼します。
あっ、春野くん。目が覚めたみたいね。
ところで、保護者の方は・・・」
「あ、今、ちょっと出てるんです」
「そうですか。
じゃあ帰ってこられたら、第1診察室に来ていただくよう伝えてもらっていいですか?」
「わかりました」
「保護者って?」
「あぁ、由紀子おばさんだよ。
今日たまたま仕事も休みだったんだって」
由紀子おばさんは、私たちのお母さんのお姉ちゃん。
たまにしか会えないけど、私たちのことをすごく可愛がってくれるんだ。
「ただいま。あら、勇生、大丈夫?」
「うん。ごめんね伯母さん、忙しいのに」
「何言ってるのー。無事でよかったわ」
目元がお母さんそっくりで、伯母さんの顔を見て少しだけ安心した様子のお兄ちゃん。
「伯母さん、看護師さんが第1診察室に来てくださいだって」
「あら、何かしら。じゃあ行ってくるね」
「私、ちょっとトイレ行ってくる」
って言っておいて……ついて行こう!
えっと…こっちでいいのかな?
えっ、食堂!?
じゃあこっち?
うわぁ…トイレがいっぱい並んでる!
すごーい!初めて見た!
トイレの大行列!
ってことはどうでもいい!
あれぇ、ここどこ~?
もう、私って本当に方向音痴なんだから〜…