笑顔のチカラ~笑う門には福来る~


お兄ちゃんがいなくなっても、時間は当たり前のように過ぎていく。

気がつけば、もう春がすぐそこまで来ていた。


ずっと入ることができなかったお兄ちゃんの部屋。


でも、入らないといけない気がして、そっとドアを開けた。


入ってすぐに、お兄ちゃんの匂いに包まれた。

ただそれだけなのに……


「お兄ちゃん……っ」


鼻の奥がツンとして、視界がぼやけてきた。



カシャン

手をついた机の上にあった何かに触れ、それが音を立てた。


1枚のDVDだった。



デッキに入れてみると、退院したときのような元気そうに見えるけど、ちょっと疲れてるお兄ちゃんの顔が映し出された。


ビデオレターだ。

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