笑顔のチカラ~笑う門には福来る~
「よーし、今からグラウンドを10周走るぞ」
「えーっ!」
監督の一言に、みんなから批判の声があがる。
「えーって言うな。
早く終わったやつからボール蹴っていいからなー」
笑いながらそう言うと、監督はさっさと日陰に入っていった。
全員、渋々ながらスタートラインに並ぶ。
俺も、重い足を無理やり動かして並んだ。
「なぁ、勝負しようぜ」
「え……?」
これが、俺たちの最初に交わした言葉。
意味がわからずマヌケな声を出した俺に、勇生は笑ってもう一度言った。
「10周、どっちが早く終わるか勝負しよう」
「なんで俺が…」
ピーッ!
「行くぞ!」
「あっ、おい!」
俺の言葉を最後まで聞かず、勇生は走り出した。
なんで俺がそんなことをしないといけないんだ。
そう言うつもりだった。
でも、言えなかった。
ホイッスルが邪魔したからじゃない。
あいつが、すごく楽しそうに走ってたから。
みんなボールを蹴りたいだけに走ってるのに、勇生は走ること自体を楽しんでいた。