笑顔のチカラ~笑う門には福来る~
〈第1診察室〉
「あんまり、前と変わってないな・・・」
「え・・・」
「今の薬じゃ、無理だったか・・・」
ウソ・・・
だってあれ、大人でも苦しいくらい強い薬なんでしょ?
それなのに何で?
「先生、オレ、どうすればいい?」
「勇生くん、まだ治したいって気持ちはあるかな?」
「当たり前じゃん!」
「それなら・・・あと、2ヶ月の抗がん剤治療が必要になるよ」
2ヶ月!?
お兄ちゃんの顔色が変わった。
でも・・・
「・・・オレ、やるよ」
さすがお兄ちゃん。
よかった・・・
1回ダメだったくらいで諦める弱いお兄ちゃんじゃないもんね。
「先生、修学旅行までに治すことはできますか?」
そっか、修学旅行があったね。
でも、修学旅行って・・・
6月16・17・18日。
2ヶ月だから、間に合わないよ?
「……今以上に強い薬、ってことかな?」
「・・・はい」
お兄ちゃん・・・!?
「これ以上強いのを使ってしまったら、君の体力がもたない。
今まで普通にできてたことが、誰かの手を借りないとできなくなってしまうんだよ。
それだけじゃない。
副作用も強くなって、精神がやられてしまうかもしれないんだ」
「・・・・・・」
「一旦、部屋に帰って考えてもいいですか?」
お兄ちゃんを落ち着かせないと。
今、すごく悩んでる。
みんなには、修学旅行までには帰ってくるって言ったみたいだから。